2018年3月4日日曜日

解離の本 その2


1.はじめに
DIDを始めとする解離性障害を持つ患者さんは、自分自身に起きている症状や特殊な体験の数々について、特に疑問に思ったりすることなく過ごしていることがよくあります。症状が子どもの頃からあれば、もうそれは生活の一部になっているでしょうし、それに何か困ったことがあっても他者に相談しないのは、解離の患者さんにはよくあることです。こうして病識のないまま日常を過ごし、医療受診までに長い年月を要することは少なくありません。中には子どもの頃から生活に支障をきたすほどの症状がありながら、違和感なく過ごしている場合もあります。
自分の解離体験について人に話さない、という傾向は、「自分が人とはかなり違うらしい」、「他の人には私のようなことはおきていないらしい」という自覚が芽生えた後も、時にはよりいっそう顕著になる可能性があります。「私の中に何人かがいるなんて、とても人に話せませんでした。」「人が自分を異常者扱いするに違いないと思いました。」という患者さんたちからの声はしばしば耳にします。DIDの症状があまり目だたず、明らかにされないという傾向の一端は、患者さんたちの「人に知られたくない」という気持ちも影響していると考えられるのです。
ここではその一般的な症状を取り上げ、受診に至るまでの様々な経緯をご紹介し、最初の出会いにおける適切な対応と治療への導入について解説します。