2018年1月19日金曜日

パラノイア 推敲 9

本題からそれていく・・・・。

 ユングに対する攻撃性が最初に自分に存在したのではないか、と言われればフロイトは絶対憤慨するだろう。「リビドー説は正しいことを私は確信している。どうして私が真実を認めようとしない哀れなユングに殺意を抱くだろうか? (彼こそが真実を先に見つけた私を殺害しようとしているのだ。)」 そして同じように、
  •    「ドラを最初に見捨てたのは私だって? ということはK氏だって? K氏こそいい迷惑だろう。ドラに一方的に(無意識レベルでの)愛情を向けられ、それが受け入れられないとなると、ドラは勝手にK氏に見捨てられたと責めるのだから。」 
  •   「ライウスが息子エディプスを殺そうとしたのが先だって? ナンセンス。か弱い息子を殺害しようとする父親などいるだろうか?
もちろんこれらのフロイトの説はそれなりに筋が通っている可能性がある。しっぺ返しは相互に続いていくために、最初のしっぺがどちらから発したものかについては証明の仕様がない。しかしそれにもかかわらず犯人が特定されるという前提がそこにはあるのだ。そしてそれは決してフロイトではないことになる。しかし実はフロイトの原体験としての自己愛憤怒が、彼をして最初の犠牲者にしたのではないだろうか?

ところでこの「トゥクオーキー」、調べてみると面白い。Wiki 様(英語版)によれば、これは論理上の偽り logical fallacy 、一種の詭弁であるという。

Tu quoque は次のようなパターンを踏むという。

まずAさんが「Xだ」、と主張する。Bさんは「そもそもAさんこそがXという主張と矛盾しているあり方や行動を示しているではないか。だからXは間違いなんだ」という。これだけではわかりにくいが、例として次のようなものを挙げてある。


Aさんが「動物は大切に扱わなくてはならない」(X)と主張する。しかしそのAさんが毛皮のコートを着ているためにその主張は聞き入れられない。

ところでこのロジックはいわゆる ad hominem とも関連しているらしい。日本語ではいわゆる「人身攻撃」と訳される。Aさんが「盗みはいけない!」(X)と主張しても、そのAさんが窃盗を犯して前科がある場合には、「こんな人の主張はあてにならない」となる。つまりロジックそのものではなく、それを主張している人を信頼性に乏しい、という理由でX自身を却下するのである。

調べている途中で出会ったのが「燻製ニシンの虚偽(red herring)」 これも面白そうだ。推理小説などで、真犯人をカモフラージュするために、最初の部分ではその人の善良さを表すエピソードを挿入したりする。実際は猟犬を惑わすために、獲物とは別の方角に、匂いのきつい燻製ニシンを置いておく、という意味だったらしい。

ということでますますフロイトから離れていく・・・・・。