2017年11月9日木曜日

ローゼンフェルドの自己愛理論 ⑤


ローゼンフェルトの理論をもう少し掘り下げてみましょう。彼は心の一部に破壊的な理想化された自己の部分が存在し,他の性愛的な対象を求め依存しようとする自己の部分を支配している内的対象関係について論じます。そして前者を「破壊的自己愛組織」と呼んだのですさてここからが重要で、またRの理論で一番わかりにくいところです。彼はこの部分はしばしば理想化され、また偽装され、スプリットオフされて沈黙していると説明しています。そしてこれは、子供が小さく何もできない無力な存在であることから生まれる全能的なファンタジーであるとも言っています。そしてその場合、親の側のover-indulgence,and particularly the lack of a holding and containing environment が寄与すると書いてあります。つまり甘やかしすぎ、特に親の抱えコンテインする環境の欠如が問題となると言っています。(P71) これを読むとエーっとなりませんか。結局ローゼンフェルドも環境因をいっていたのか、ということにもなります。クライン派なのに。
 しかしそれでもローゼンフェルドは結局はトラウマ理論にはなりません。結局子供は無意識的な罪悪感を背負った存在となる、と記していますが、これは内的欲動論のお決まりの説明です。そしてそのことの説明が、私にとってはもっとも不可解な部分なのです(P87,88)。 あえてここで書いておきましょう。Rによれば「この誇大的な構造の下に隠れているのは、原初的な超自我であり、それは患者の能力や観察や、現実の対象を受け入れるニーズについて、馬鹿にし攻撃する。最も混乱するのは、この羨望に満ちた破壊的な超自我が、善意に満ちた人物に首尾よく偽装することだ。この偽装こそが、患者に罪悪感を生み、彼が前進する際にその障害となる。そしてそれがフロイトの述べた陰性治療反応につながるのだ。」ワカラネー!
 この視点はビオンの精神病的パーソナリテイの研究とともに,イギリスにおける病理的パーソナリティの研究の基礎となり、Steiner の「病理的組織化」の研究に大きな影響を与えた。