2017年11月16日木曜日

公認心理師に向けて 推敲 ④

次に「症候学」を挙げたいと思います。症候学とは、心理師はたとえば『うつ病』の診断はつけられなくても、鬱の症状を把握するだけの知識は身に着けるべきであろうということです。アメリカの心理師は、そしておそらくほとんどの先進国において、臨床心理士は症候学を学び、ついでに薬のことも非常によく知っています。アメリカのいくつかの州では、心理師が薬の処方をする権利を与えられているほどです。入院時のカルテの最後の部分には診断名があり、そこにはソーシャルワーカーも心理師もサインをする欄があります。つまり診断は各職種の合意で決められるわけです。と言ってももちろんイニシャチブを取るのは精神科医ですが。
私は将来の心理師像として次のようなイメージを持っています。それは精神疾患について勉強し、診断までは至らなくても、症候学的な知識を身に着けておくことです。抑うつ的な患者さんには、食欲や睡眠、倦怠感や不安、希死念慮の有無などを問い、把握しておくこと。もちろん臨床心理士なら診断を付けることは出来ないということになっていますが、症状の把握はできるようにしておくこと。さらには精神科の薬物についても基礎知識を持つこと。これにより医師との疎通性はずいぶんよくなるでしょう。あるいは入院患者のインテークの際に、過去の病歴や治療歴に踏み込んだ情報を聞くことが出来、医師があまり付け加えることがないほどのインテーク記録を作成することもできるでしょう。ところが現在は心理士さんは社会生活歴のみ聞いておしまい、という場合が圧倒的に多いという印象を受けます。そしてこのことは次に述べる「面接力」を高めることにもつながります。


以上医師の立場から、そして分析家の立場から、公認心理師のあるべき姿について考えをお話しいたしました。ご清聴ありがとうございました。