2017年10月28日土曜日

精神分析をいかに学んだか? ⑥

 どうぞ精神分析をいったん飛び出してください。私の提言はだんだん大胆で危険になって行きますが、それは精神分析を真の意味で学ぶためには、いったんそこから出る必要があるだろうということです。ただしこれにはいくつかの問題があります。精神分析を学んだ人は、すでに時間、お金の点で投資をしてしまっています。今更どうやって分析から離れることが出来るでしょう。多くの精神分析の学徒は精神科医や心理師になったころから修業を積んでいますから、年齢が40台、50台になってから新たに認知療法だ、EMDRの講習会だ、というわけにはいかないでしょう。これを経済学では埋没費用 sunk cost と言います。投資をしたのだから元を取らなくてはならないという考え方です。その気持ちはわかるのですが、もう一つ計算に入れなくてはならないのが、「人生このままでいいのか」ファクターです。残された治療者としての人生の中で、自分の学んだ精神分析理論を自分流にアレンジし、一番クライエントの益に結びつくような形にするのです。分析的なお作法に縛られる必要はありません。あるバイジーさんが、「私はこのクライエントとのセッションに、どうしても週に一回30分の時間しか取れません。これでは精神分析的な精神療法とも言えないのではないでしょうか?」とおっしゃいました。確かに日本のスタンダードでは、週一度50分は、最低ラインと考えられています。でも特に精神科医などは、週一度30分が精いっぱいということは現実として起きています。それでもクライエントのためになるのであれば、続けるべきでしょう。このようなことに頭を悩ますべきではないのです。