公認心理師のカリキュラムで医療保健分野の実習を必須としていることからも、公認心理師は精神医学の立場からも様々な思惑があることは明らかであろう。精神科医からの要望については、精神神経学会からの意見書に詳しい。2016年3月に、「公認心理師法カリキュラム作成に際しての要望書」が提出されているが、具体的な7つの項目のうち、「精神医学をしっかりトレーニングせよ」という主張は一か所しかない。ウーン、この発表、どの方向に持っていこうかな。分析の立場から、医師の立場から、という二つの方向性がある。
私は次のようなイメージを持っている。あくまでも症候学的な知識を身に着けること。私はこのことをいろいろなところで言っているのであるが、心理士は、精神分析家は、診断について臆病になってはいけないと思う。どんどん診断を付けるべき。しかしそれは結局は仮説であり、ラベリングでしかないことを同時に認識することが大事だということである。
考えてみれば精神分析家だってラベリング焼き目付を常に行っていることを自覚するべきだ。フロイトは症状に対して抑圧された同性愛願望とか、夢の内容について性的なファンタジーの象徴化されたものとかの言い方をした。現在の分析家だって、これは患者の気持ちの投影同一化だとかいうのだ。
まあそんな極端なことは言わないで。私は日本では物事をあまりにぼかし過ぎると思う。その結果として得るところも失うところも多い。しかし心理士が精神医学的な知識を身に着け、脳のプロセスを考慮に入れることの益は大きい。しかし問題は、これがどうして分析学会のテーマになるか、ということだ。