2017年9月2日土曜日

揺らぎと心 ②

揺らぎという現象は、複雑系における現象の中でももっとも不可解でかつ基本的なものではないだろうか?皆さんは「ブラウン運動」について御存知だろう。顕微鏡で水に浮かぶ花粉を観察すると、細かなランダムな動きを見せる。これは当初花粉が生命活動を行うからだと説明された。ところがそれは1905年、かのアインシュタインにより初めて科学的な研究が行われている。そしてそれが花粉に衝突する水分子によるものだということが分かったのである。どうしてこのようなことが「発見」されるのにこれだけの時間がかかったのか。それには私たちが基本的に持つ複雑系に対する無理解が原因だった。しかし好む理解は十分理解できることなのだ。
考えても見よう。水分子は、マッハ並みの衝突で毎秒100億回ほどの衝突を繰り返すという(高安、P21)。たとえて言えば巨大な獲物、たとえばクジラに無数のアリが群がり、押したり引いたりするようなものだ。クジラはアリたちの力でフラフラ動くだろうか?でもブラウン運動とはそういうものだ。ただし時間軸をうんと引き伸ばして考えなくてはならない。長い目で見るとクジラはアリたちにより目に見える形でフラフラ動かされている可能性がある。しかしそれはおそらく何時間も何日も時間軸を引き伸ばして初めて見える現象なのだ。

私たちは常識的にはこう考える。「クジラがアリたちの力で動くはずはない。だってアリたちは四方八方から押し引きをしているので、相殺されるはずだからだ。」これが知識人たちの常識だろう。数学には大数の法則がある。二分の一の確立で表の出るコインを投げ続けるとしよう。何千、何万回も投げ続けていれば、表の数は全体の数の二分の一に、限りなく近づいていくだろう。ということはほぼ表と裏の数は半分であると考えていい。水の分子もそれと同じだ。ということは花粉の粒は水の分子により四方八方からほぼ同じ力で押されている。ということは花粉は決して動かないはずだ。でも花粉はフラフラ動く。アリエない! ということで100年前までブラウン運動は存在したなかったことになる?!?!