2017年9月28日木曜日

日本における対人ストレス (4)

自分の気持ちを持つことを禁止される社会
私の臨床で非常に良く出会うのが、「怒りの感情をもてない」、「自分は自分の感情を持っていいということの意味がわからない」という訴えである。これにはいくつかのレベルがあるらしい。まず比較的病理性の浅い「自分の気持ちをもてない」においては、母親の気持ちが優先されて、娘はそれに従うことを強く強制される。それは比較的巧妙に行われることがあり、しかも母親自身がそれに気が付かない。母親は自らの皮膚自我を用い、娘の気持ちを読み取り、また娘にもそのようにすることを要求することもある。
 これを書いていて、「解離性障害」(岩崎学術出版社)に書いた次の事項を思い出した。
「解離が生じやすいようなストレス状況としては、「投影や外在化」が抑えられるようないくつかの状況が考えられる。それらは具体的には以下のとおりである。
状況1 ネガティブな心の内容を否認したり秘密にすることを強要されること。
状況2 ネガティブな心の内容について語ることに対する恥の意識を持つ(植えつけられる)こと。
状況3 ネガティブな心の内容について責任感や罪悪感を持つ (植えつけられる) こと、である。」

 要するに、ネガティブな感情を表現できないような状況が継続するということである。ただしこれは解離を引き起こさなくても、子供にきわめて強い心的なストレスを与えることは確かであろう。その結果として人格の解離が生じ、影の人格の部分が成立することになる。しかし驚くべきことに、それは「親の側の影人格」と呼応しているという場合がある。ある若い女性は、自分の中の影の部分が、母親の中の影の部分と支配-被支配の関係になり、その人格の存続に貢献していたと語った。