報酬系は自傷行為により細胞死を防く(おそらく)
勿論自傷行為、例えばリストカットなどがパニックボタンとして作動する保証はない。というよりは普通私たちはどのようなストレス下でも、それを痛みと感じてしまい、余計大きなストレスとなることを知っている。しかし例外的な人たちもまたいる。その人たちの場合に自傷がパニックボタンとして成立する過程を考えよう。
たとえば非常に大きな心のストレスを抱えている人が、髪をかきむしり、頭を壁に打ち付けるとしよう。すると少しだけ楽になることに気が付く。それまでは痛みという不快な刺激にしかならなかったはずのそのような行為が、突然自分を救ってくれることに気が付く。試しに腕をカッターで傷つけてみると痛みを感じず、むしろ心地よさが生まれる・・・。こうして普段は絶対押すべきでないボタン、と言うよりはそこに存在していなかったボタンが、緊急時用のパニックボタンとして出現する。
自傷による報酬系の刺激は、このように一種の心身にとっての「駆け込み寺」となる。そこが発動することで、精神は破綻を免れる。精神の、というよりは中枢神経系を保護する役割を果たすのであろうと私は考える。危機状態が長く続くと、神経細胞のアポトーシス(自然死)を起こしかねない時に、報酬系はその興奮を強制的に和らげる。その意味で神経を保護しているのだ。最近の「神経保護neuroprotection 」というテーマは、それだけで一つの学会が出来るほどだが、( “Global College of Neuroprotection and Neuroregeneration (GCNN)”)報酬系は細胞死を防いでいる、というのが私の仮説である。
自傷による報酬系の刺激は、このように一種の心身にとっての「駆け込み寺」となる。そこが発動することで、精神は破綻を免れる。精神の、というよりは中枢神経系を保護する役割を果たすのであろうと私は考える。危機状態が長く続くと、神経細胞のアポトーシス(自然死)を起こしかねない時に、報酬系はその興奮を強制的に和らげる。その意味で神経を保護しているのだ。最近の「神経保護neuroprotection 」というテーマは、それだけで一つの学会が出来るほどだが、( “Global College of Neuroprotection and Neuroregeneration (GCNN)”)報酬系は細胞死を防いでいる、というのが私の仮説である。
神経細胞は過剰な興奮によりカルシウムチャンネルが開いてたくさんのカルシウムイオンが細胞内に流入して、それが細胞を殺してしまうという、先ほどのアポトーシスという現象が生じるのである。報酬系がすることは、快感を提供するというよりは、過剰な興奮にさらされている神経細胞を強制終了してしまうという意味があるのではないか。まさに英語圏の人々が言うところのreduce the tension が生じるというわけだ。その意味では、渇望≒自傷行為に至る状態、ということが出来るのではないか。