2017年2月25日土曜日

脳科学と心理療法 ②

私が最初に言いたいのは、これらの研究が示す人間の心の働きの持つ非線形性と、それとは対比的な、臨床において未だに跋扈している驚くべき還元主義なのである。
  例えばある患者さんが言う。(架空の話である。実際はテレビで見た精神科医のコメントをヒントにした創作。)
外に出るのに、マスクがないと不安なんです。
精神科医:うーん。マスクをかけるというのは、ある意味では社会との間に壁を気づくことです。それに慣れてしまうことは・・・・危険なことだと思います。
この種の会話は日常生活でいくらでも溢れている。根拠のない、しかし間違っているとも言い切れないコメントやアドバイス。おそらく人間の心の性質は、人類の歴史が始まって何万年もたち、ギリシャで哲学が始まってから(あるいはそれ以前から存在)1000年以上たっても新たに解明されない一つの要因だろうか? 人の心や行動が重決定されるということだろう。小説や映画のモティーフが変わらないのも同じ理由だ。
 私たちの日常生活における心の在り方を理解する決め手は、決定論であり、因果論である。本質主義ないしは実証主義と言ってもいい。(本心はAであり、それが言動Bに影響を与えている)
 もう一つ。
 精神科医の言葉。彼女に抗鬱剤は出しませんよ。当然のことです。彼女は時々気分が高揚し、病気が治った、また仕事に復帰できる、と感じるときがあるそうです。明らかに躁状態の兆候です。双極性障害に抗鬱剤は禁忌です。
うーん?
実はこんな例は心理、精神科臨床にあふれているのである。もう一つ行こうか。
患者が話に詰まってメモを取り出す。治療者はそれを制す。「ここはあなたが頭に浮かんだことを自由に話すことです。メモを見たらその自由さが失われてしまうではないですか?」

うーん、