2017年2月24日金曜日

神経科学と心理療法 ①

「神経科学と心理療法」 というテーマで原稿用紙7枚。つまり2800字か。
でもこのテーマ、簡単ではない。というかあまり論じられているものがない。なぜ私なのだろう?
こんな感じになるだろうか。神経科学的な知見はきわめて多くみられる。しかし臨床で行われているのは、単純な因果論や象徴理論に基づくもの。診断も精緻化されているとは言えないし、解釈的な正確さについては懐疑的な目が向けられている。おそらく臨床場面で行われている会話は変わりないのだ。
いろいろ資料を調べることもできるが、本題から入る。
最近の心の理解は心の非線形性に注目している。たとえばこんな本を紐解いてみる。
James Rose, Graham Shulman eds. (2016) The non-liner mind.psychoanalysis of complexity in Psychic Life. Karnac.
これは複雑系から脳に迫った学術書である。それにより何と精神分析を理解しようとしているのだ。そしてカオス理論が治療にどのように役立つか、と言うことももくろんでいる。すごい本だ。
そうしてもう一冊。
Hassin, RR, Uleman JS, Bargh, JA eds. (2006) the New Unconscious Social Cognition and Social Neuroscience. Oxford

この本は基本的には社会神経科学に関するものであるという。結局これも脳の構造や働きから人間の社会行動を見直そうという動きを反映したものであり、そこには非線形性や複雑系理論が関与している。
私が最初に言いたいのは、これらの研究が示す人間の心の働きの持つ非線形性と、それとは対比的な、臨床において未だに跋扈している驚くべき還元主義なのである。