今日はすごく時間をかけて絵を描いた!
走化性(ケモタキシス)という仕組み
匂いに向かって進む性質、それはC.エレガンスはおろか、なんと単細胞生物(!)にも存在することが分かっている。それを走化性 chemotaxix と呼ぶ。“chemo”とは化学の、“taxi”とは走る、という意味だ。タクシー、というではないか。
生命体は、濃度勾配に関して左右の受容体で異なる反応をすることで、向かうべき方向性を感知し、進路を選択する。 |
化学物質に濃度勾配があれば、鞭毛(細く長い、ムチのような毛)を持った細菌などはそれに従って移動する。いや鞭毛をもたない白血球なども同様の行動を示すという。そして何に向かって走るかにより、温度走性(温度の勾配に沿って走る)、走光性(明るさの勾配に沿って走る)などがあるが、医学の分野との関連で濃度勾配により移動をする走化性の研究がずば抜けて多いのは、これが生物学と医学の両方で特筆すべき重要性を持っていることの証である。何しろ1700年代初頭にレーベンフックが顕微鏡を発見した時から、「なんだ、この細胞、ジワジワと一つの方向に動いているようだぞ!」ということが発見されたという。生命のもとになる単細胞が、どこかに向かって泳ぐ(というかジワジワ動く)ということが分かっていたのだ。そしてそれがある種の化学物質に向かう、あるいはそれを嫌って避けるということは、その細胞の基本的な性質としてあるのだ、という認識が高まってきた。あとはその研究の歴史が延々と続くのである。由来はCエレガンスどころの話ではなかった・・・・・。Cエレガンスは多細胞生物である。体長一ミリ、細胞の数は1000前後の立派な体を持っている。彼が「走る」のはむしろお茶の子さいさいのはずだ。
科学者たちが考えている仕組みは、おそらく私たちが持つであろう発想とあまり変わらない。身体の頭部に左右に分かれたセンサーが存在する。右方向が感知した物質濃度と左側のセンサーが感知した物質濃度に差があれば、高い方に頭が向かう、という類の装置が容易に走化性を成立させることになる。
ではどのような形で走化性が生じるのだろう? たとえば鞭毛を持っている細胞の場合次のようなことがおきるらしい。反時計回わりをすると、鞭毛はひとまとまりになる。それにより細菌は直線的に泳ぐ。そして逆の時計回転をすると、繊毛がバラバラの方向を向き、その結果として生物はランダムな方向転換をするという。要するに逃げる、ということなのだ。そしてそれが起きるために存在するべきものがある。リセプター(受容器)だ。細菌がXという匂いに向かっているとしよう。するとXの分子が最近の表面にあるリセプターにくっつく。そこからさまざまな化学反応を誘発するのであるが、簡単に言ってしまえば、一瞬前のXの濃度に比べて、現在の濃度が上昇しているか、下降しているかにより繊毛の回転方向が決まってくるわけである。たとえばリセプターが細胞の表面に沢山あり、ある時点でそれのNパーセントにXがくっついているとしたら、しばらく走るとNプラス1パーセントに上昇したことで、細菌は「ヨッシャー、この方向や!(なぜか関西弁だと雰囲気が出る)」とばかりに鞭毛を反時計回りにブルンブルン回すという仕組みが出来ている。