2017年1月29日日曜日

BPD 推敲 ④

<鑑別診断>
ある精神疾患のBPDとの鑑別の際にしばしば聞かれるのは、「これはBPDか否か」という二者択一的な見方である。しかしBPDは他の精神疾患と併存している場合が多い。ある報告では、 BPDは生涯平均4.1の第一軸診断(DSM-IV-TR )と1.9の第2軸診断(同)を有するという(2)。その場合BPDの症状は併存症のそれを互いに強く影響しあい、より複合的な臨床像を示すことになるだろう。

感情障害(うつ病、双極性障害) BPDしばしば感情障害と並存する。BPDのうつ病の生涯罹患率は7183%とも言われる(2,3)。BPDによる慢性的な抑うつ気分と、双極性における(軽)躁的な気分や衝動性の昂進はBPDにおける逸脱行動に類似することがある。ただしうつ病とBPDが併存した場合、片方の回復はもう片方の回復を伴うことが多い(7)。

不安障害 米国の研究では、BPD88%に不安障害が見られ、そのうちパニック障害は34% から48%PTSD47% から56%が有し、またアルコールや薬物依存は50%から65%に見られるという(23)。
2. McGlashan TH, Grilo CM, Skodol AE, et al. The Collaborative Longitudinal Personality Disorders Study: baseline Axis I/II and II/II diagnostic co-occurrence. Acta Psychiatr Scand. 2000;102:256-264.
3. Zanarini MC, Frankenburg FR, Dubo ED, et al. Axis I comorbidity of borderline personality disorder. Am J Psychiatry. 1998;155:1733-1739.
7. Gunderson JG, Morey LC, Stout RL, et al. Major depressive disorder and borderline personality disorder revisited: longitudinal interactions. J Clin Psychiatry. 2004;65:1049-1056.
解離性障害 BPDと解離性障害はしばしば診断上の問題となりやすい。解離性障害における自傷傾向や自殺念慮、人格交代の際に見られる衝動性や他者への攻撃性は、しばしばBPDの症状とみなされる傾向にある。さらには両者には類似する生活史が見られることもある。またBPDの第9診断基準に解離症状が掲げられていることも、混同に一役買っている可能性がある。無論併存が見られることもまれではない。しかし両者には前者には外在化傾向、後者には自罰傾向といったきわめて異なる性格傾向が見られることも事実である。