2017年1月12日木曜日

BPD  ④ 


従来から論じられている精神病様症状については、BPD者が通常の神経症患者のような臨床像を取りにくいという形で従来から論じられてきた。患者はカウチの上で自由連想を促されると、連想が弛緩する傾向にあり、話の筋が追えなくなったり、錯覚、幻覚に近い体験を語ったりする。過去の出来事と現在との関連が曖昧になったり、自分の内側からの声が聞こえたり、見えないはずの誰かの影が知覚され、それにおびえたり、それに語りかけたりするという様子がうかがえる。そのためにBPDは一見神経症水準にある人たちが統合失調症と踵を接しているのではないかという議論がなされたのである。(BPD border とは神経症と精神病の境目、という意味を有していた)。その後BPD者をフォローすることで彼らが統合失調症を発症することはなく、結局その意味でのボーダーラインの意味も認められないことになった。ただしBPDについてはそれが特に幼少時のトラウマが深く関係していることが論議されるようになり、精神病様の症状とは、実は解離症状ではないかという見解が出されるようになった。解離においては幻聴、幻視、他の人格状態との混乱により生じる話の筋の追いにくさといった症状は明確に存在することが多いため、従来の精神病症状についての記載は、DSMにおいてはこの第9項目に移行したと考えることが妥当であろう。このように考えると、ストレスに関連した種々の症状は、結局はBPDにおいて過去に生じたトラウマのフラッシュバックが生じているという考え方にもなる。(以下DSM-5の解説の削除部分。)
 診断を支持する関連特徴
BPD障害をもつ人は,日標が実現しそうになるまさにその瞬間に,それを台なしにしてしまうという様式をもつことがある(:卒業直前に退学してしまう,治療がうまくいっていると話し合った後に深刻な退行を起こす,関係が続くことがはっきりしたまさにその瞬間によい関係を破壊してしまう)。人によっては,ストレスのあるときに精神病様の症状を発現することがある(:幻覚,身体像の歪曲,関係念慮,催眠現象)。この障害をもつ人は,対人関係よりも移り変わる対象(すなわち,ペットや無生物の所有)と一緒にいるときのほうが安心感を感じているかもしれない。この障害をもつ人は自殺によって早すぎる死を迎えるかもしれないが,それは抑うつ障害や物質使用障害が合併しているときに特に起こりやすい。自己虐待的行為や自殺企図の失敗結果として,身体障害が起こるかもしれない。繰り返す失業,教育の中断,離別や離婚もよくある。身体的および性的な虐待,養育放棄,敵対的な争い,月ヽ児期における親の喪失が,BPD障害をもつ人の小児期の生活歴によくみられる.合併することの多い障害は,抑うつ障害および双極性障害,物質使用障害,摂食障害(特に神経性過食症),心的外傷後ストレス障害,そして注意欠如・多動症である.またBPD障害は他のパーソナリティ障害ともしばしば合併する.

<有病率> DSM-5には以下の記載が見られる。 BPD障害の人口有病率の中央値は1,6%とされているが, 5.9%という高さに達することもある.BPD障害の有病率は,一次医療場面では約6%,精神科外来診療所で診察を受けた人の約10%,精神科入院患者の約20%である.BPD障害の有病率は高年齢層では減少するかもしれない.