従来から論じられている精神病様症状については、BPD者が通常の神経症患者のような臨床像を取りにくいという形で従来から論じられてきた。患者はカウチの上で自由連想を促されると、連想が弛緩する傾向にあり、話の筋が追えなくなったり、錯覚、幻覚に近い体験を語ったりする。過去の出来事と現在との関連が曖昧になったり、自分の内側からの声が聞こえたり、見えないはずの誰かの影が知覚され、それにおびえたり、それに語りかけたりするという様子がうかがえる。そのためにBPDは一見神経症水準にある人たちが統合失調症と踵を接しているのではないかという議論がなされたのである。(BPDの border とは神経症と精神病の境目、という意味を有していた)。その後BPD者をフォローすることで彼らが統合失調症を発症することはなく、結局その意味でのボーダーラインの意味も認められないことになった。ただしBPDについてはそれが特に幼少時のトラウマが深く関係していることが論議されるようになり、精神病様の症状とは、実は解離症状ではないかという見解が出されるようになった。解離においては幻聴、幻視、他の人格状態との混乱により生じる話の筋の追いにくさといった症状は明確に存在することが多いため、従来の精神病症状についての記載は、DSMにおいてはこの第9項目に移行したと考えることが妥当であろう。このように考えると、ストレスに関連した種々の症状は、結局はBPDにおいて過去に生じたトラウマのフラッシュバックが生じているという考え方にもなる。(以下DSM-5の解説の削除部分。)
<有病率> DSM-5には以下の記載が見られる。 BPD障害の人口有病率の中央値は1,6%とされているが, 5.9%という高さに達することもある.BPD障害の有病率は,一次医療場面では約6%,精神科外来診療所で診察を受けた人の約10%,精神科入院患者の約20%である.BPD障害の有病率は高年齢層では減少するかもしれない.