2016年12月7日水曜日

催眠 ③

催眠はやがて「解毒」されていった

催眠がある程度解毒される形になるのは、いくつかのルートがありました。一つは米国で1960年代くらいから起きたバイオフィードバックの流れではないかと思います。私の留学したメニンガークリニックでは、精神分析部門とは別に催眠部門もありましたし、バイオフィードバック部門も残っていました。私はこのバイオフィードバック部門に3か月ローテーションに行きましたが、そこではいくつかのことをやっていました。ひとつは脳波のバイオフィードバックによるトレーニング。脳波には瞑想の時に出るといわれるゆっくりとしたシータ波という波がありますが、このシータ波が精神の健康にとっていいという仮説があり、それを高めるための高価な機械が備えてありました。電極のついたヘッドギヤーを頭に付けて、瞑想をするとシータ波になると音が出ます。すると人はシータ派を出そう、と思うのではなく、音を出そうとして心をそれなりの状態に持っていくことが出来るようになります。これが脳波のバイオフィードバックトレーニング。それと体温を高めるトレーニングもありました。このバイオフィードバックはエルマー・グリーンという人の作った部門で、そのお弟子さんが脳腫瘍をイメージ療法により克服したというので話題になったところです。そこで分かったのは、人間の心には、自律神経のさまざまな働きをコントロールすることが出来るということです。暗示の変わりに、ある種のマーカーの値を高めるということで、いわば暗示を可視化することで、それをより健全に、科学的に用いるというのが、バイオフィードバックの手法だったわけです。
実はこの流れは意識が無意識をコントロールする、という精神分析の大きなテーマと並行して行われていたといえます。バイオフィードバックのワークショップに出ると、バイオフィードバックにたけると、結局人間は体をコントロールすることが出来、それは結局無意識内容を意識化することにつながるのだ、という発言を聞いてびっくりしたことがあります。しかしそれを言っていた先生は精神分析の本流には属さず、そのせいでそのような無知な発言もできたということが言えると思います。

催眠の流れを解毒したもう一つの要素はEMDRの流れであり、メニンガーではこれが多用されるようになってから、催眠部門の先生方は結局EMDRの方に流れて行ってしまったといっています。世の中にEMDRのことを悪くいったり、それを神秘的だと感じる人は少ないわけで、その分催眠はそのような流れや、イメージ療法に発展的に吸収されてしまったという印象を受けるのです。