2016年12月5日月曜日

催眠 ①

はじめに

●●先生の前座ということで、私は適当でユルイ話です。
催眠は怖くないというテーマでお話をするわけですが、逆に言えば、催眠はとても神秘的で、同時にどこか恐ろしいところがあります。ですから人間の心に興味を持つ人は、必ず催眠にも興味を持つというのが定番だと思っています。例えば私が皆さんのうちどなたか一人に来ていただいて、「これからあなたに催眠をかけます」と言ったら、どなただって緊張するでしょう。私が貫禄があったり、権威的であったり、高そうなスーツを着ていたり、ひげを生やしていたりしたら、あるいは身長が190センチくらいあったら、もっと怖くなるでしょう。そしてその怖さというのは、自分が催眠にかかってしまい、恥ずかしい、情けない姿をさらしてしまったらどうしよう、という不安に関連していると思います。催眠はそんなに簡単にかかるものではなく、人の心はそんなに簡単に支配されることはないということがわかっていても、催眠にはそのような神秘的で怖いイメージがつきものなのです。
 20歳代の頃の私にとってもそうでした。精神科の研修医が終わってやっと少し時間に余裕が出来た時に、初めて私がしたのは、会津若松にいるという催眠の大家に習いに言ったということでした。年にして40代の半ば、開業して数年たって仕事が軌道に乗り、漢方と精神科と催眠を組み合わせたかなりユルイ外来をしていました。美人の看護婦さんが数人いて、彼女たちはA先生の催眠に簡単にかかってしまうということでした。確かに彼女たちはA先生の催眠に簡単にかかり、ある看護婦さんは、先生が指をパチンとならすだけでかかりました。それは不思議な光景でしたが、一週間滞在してわけが分からないままかえってきましたが、最大の問題はやはり、私がかからなかったからでしょう。それとその先生にかなり邪なものを感じたのかもしれません。ふと見ると彼は外来をするときに、デスクの上に <中略> 私はどこかで期待していたところがありましたから、自分にがっかりしたというところもあります。私の中では自分がかけられたらどうしようという恐れと期待があったからです。

 まず私が今日話したいことのひとつは、催眠は怖くない。英語に事柄にはいい点と悪い点、
good news bad news がある、というのがありますが、good news は、あなたはおそらくかからないからである、ということです。しかし二つの小さな good news があります。それは催眠に全然かからない私でも催眠を日常的に多用しているということ、それとプチ催眠なら、それこそ皆さんが毎日のように体験しているということをお伝えしたいということです。ちなみにプチ催眠とは、もう少し正式に言えば、暗示 suggestion ということです。