解離性障害の分類
さてDSM-5に提示された解離性障害の分類は、以下のとおりである。
300.14 解離性同一症・解離性同一性障害 Dissociative
identity disorder
300.6 離人感・現実感消失障害 Depersonalization-derealization
disorder
300.15 他の特定される解離性障害
Oher specified dissociative disorder
長期および集中的な威圧的説得による同一性の混乱/ストレスの強い出来事に対する急性解離反応/解離性トランス
3001.15 特定不能の解離性障害
Unspecified dissocative disorder
300.12 解離性健忘 Dissociative
amnesia
他方ではWHOによる診断基準であるICDの新版(ICD-11)は当初2015年に発表されることになっていたが、現在では2018年に延期されている。その試案として後悔されているもの(ベータ試案)には、以下のような項目が挙げられている。(ちなみに解離性障害は、「ストレスと特に関連する障害群 disorders
specifically associated with stress」と 「身体苦痛障害 Bodily distress disorder 」の間に位置する。ここら辺はDSM-5に準じている。(DSMの場合は 7「心的外傷およびストレス因関連障害群、8.「解離症群/解離性障害群」、9.「身体症状症および関連症群」の順である。)
解離性神経症状障害 Dissociative neurological
symptom disorder
解離性健忘 Dissociative amnesia
離人-現実感喪失障害 Depersonalization-derealization
disorder
トランス障害 Trance disorder
憑依トランス障害 Possession trance
disorder
複雑性解離性侵入障害 Complex dissociative
intrusion disorder
解離性同一性障害 Dissociative identity
disorder
二次的解離性障害 Secondary dissociative
syndrome
このベータ版には少し聞きなれない用語があるので、少し説明するならば、解離性神経症状障害とは要するに転換症状をさす。転換
conversion という用語そのものをなくす魂胆か?これは要するに転換症状だ。ICDとDSMの齟齬、すなわち両者は転換症状を解離として認めるかどうかに差があるという状況は、このベータ案が採用されると、今後もICD-11とDSM-5の間で存続することになる。
解離性健忘 離人-現実感喪失障害 はDSM-5にもある。トランス障害についても、 これもDSM-5の「他の特定される解離性障害」に含まれている。ちなみにトランス状態とは、単回の意識状態の変化、それが周囲の気づきの狭小化や焦点化が、本人がコントロール不可能なパターン化した動きや姿勢を伴ったものである。
複雑性解離性侵入障害についてはやや複雑であるが、概ねDIDの不全形として捉えてよさそうである。
異常の分類で特徴的なのは、解離性遁走がDSMからもICDからも表立って消えてしまい、解離性健忘の中に吸収されるということである。