2016年11月18日金曜日

解離性障害 推敲後 ②

解離の定義

解離性障害の定義は1980年のDSM-III 以来基本的には変わらない。DSM-5においては、「解離症群の特徴は、意識、記憶、同一性、情動、知覚、身体表象、運動制御、行動の正常な統合における破綻およりまたは不連続である。」(DSM-5)とされる。他方のICD-11ベータ試案では「解離性障害は、記憶、思考、同一性、情動、感覚、知覚、動作、体の動きの統御の正常な統合の、不随意的な破たんや不連続性により特徴づけられる。」とある。この両者は全くと言っていいほど同じである。人間は記憶、思考、同一性、…を通常は統合している。その破綻が解離である、という理解である。ちなみにDSM-5において、その対象として知覚や運動制御が含まれるのは興味深い。なぜならそれにより生じる転換性障害は、DSM-5においては解離性障害ではなく、「身体症状症」に分類されているからである。ちょっとした(かなり深刻な?)矛盾だな。
 この分類の一つの問題は、「統合の破綻」という解離の定義が、同様に統合の失敗を意味するはずの「統合失調症 schizophrenia 」は解離性障害とはまったく異なる障害である、ということだ。(だからこれはおかしい訳語だ、とあれほど言ったのに。←嘘である。私がアメリカにいた間にこんなことが起きたのだ。知っていたら声を上げたのに。もっともリーゾナブルな訳語は「連合失調症」なのだ。)

さらには統合の破綻はある機能の失われることをニュワンスとして含むが、これは解離の陰性症状に相当する。しかし解離においてはある機能が暴走したり、異なる人格状態が自分が記憶を失っている間に活動をするなどの、解離の陽性症状が顕著なのである。