2016年10月4日火曜日

退行 ⑤ 

退行 ⑤

もう少しで「分析学事典」の小此木先生の長い退行の項目の記載が終わる。

ウィニコットは,患者が「偽りの自己 falseself」を早期幼児期に発達させたために「真の自己」を発見しようとして,このような治療的な退行が必要になる場合があるという (パリントのいう良性の退行)。大別すると,精神分析における退行のとらえ方には,ジャクソンの流れを継ぐフロイトにおける病因的退行としての退行のとらえ方と,ユングJungC. G.のように退行の中に進展,そして無意識の創造性を認め,退行を介しての生まれ変わりや再生,根源的な生命力の発揮を見る生命論的な退行のとらえ方の2つの流れがあるが,クリスの一時的・部分的退行の概念をはじめ,パリント,ウィニコットの治療的退行論にもユングのそれに近いものがある。さらに,オーストラリアのミアーズ MearsA. (1963)はこの後者の見地から,外的なストレスから解放されたときに起こる退行(先祖返り退行 atavistic regression) による自然回復機能 natural restorative mechanismを概念づけている。特定の心理的操作によって生起させることのできる操作的退行としては,既述した治療的退行に加えて,催眠性の退行,ロールシャツハ・テスト中の一時的な退行などがあるが,これらはいずれもクリスの自我による一時的・部分的退行のひとつとして理解される。また催眠性の退行には,暗示によって,現在の立場から過去のある年齢の出来事を思い出したり,その年齢にふさわしい行動をとったりするような退行(「年齢退行 age regression) と,暗示された年齢に実際に存在していた行動の型がそのままよみがえってくる復活 revivification が区別される。なお,一般心理学領域では,レヴィン LewinK らは,退行をより分化した機能状態からより未分化な機能状態への未分化化 dedifferentiation として理解し,必ずしもこの退行は,発達経路に従ってより初期の段階へ戻ることを意味しない場合があるという。(小此木啓吾、文献略)

入れるべきキータームはもうわかった。クリスのARISE,バリントの治療的退行論、嗜癖。最近の理論をここに加える。やはりベースはウィニコットか?