2016年6月6日月曜日

愛 ③

 昨日おかしな夢を見た。汗をびっしょりかいていた。夢の中では、新聞にこんな記事があった。
「最近、カーナビゲーションがロボット並みの知能を獲得したせいで、運転する所有者と様々なトラブルが生じていると報告されている。府中市に在住のPさんはこう話す。
「モールまで出向こうと車を出し、カーナビに行先を入力したまではいいのですが、途中でカーナビの指定する道を意図的に逸れたんです。明らかに私がいつも使っている道の方がすいていると思ったからです。すると突然「ナビ子」(Pさんはこう呼んでいるという)から「エッ?」という声が聞こえ、画面がフリーズしてしまいました。耳を澄ましていると『シク、シク・・・・』と泣き声のような声が聞こえ『私をそれほど信用してくれないのですね・・・』という恨み言のようなつぶやき声もあり、それから画面はなんと自動的にオフになってしまいました。」「Pさんはそれから何度も関係を修復しようと試みるが、エンジンをかけると最初だけナビ子はオンになり「こんにちは」と言ってくれるが、突然画面が砂嵐になったり、時には明らかに誤った情報を画面に表示したりする。Pさんは近く、自分がカウンセリングを受けることになっているという。」

ゼキ論文はここから有名なホルモンの話に入る。オキシトシン、バソプレシンだ。医学部時代、脳下垂体の後葉から分泌される、互いに構造のよく似たタンパクホルモンとおぼえた。その頃はあまり気にしていなかったが、最近この二つと報酬系の関係が盛んに論じられている。話のキモは、この二つのホルモンのリセプター(受容体)が報酬系にたくさんあるということだ。どういうことか。それは交尾の際に分泌されるドーパミンが両ホルモンの分泌を促し、そこであることが促進される。それは交尾の際の相手を記憶に焼き付けることであるという。それからゼキ論文は、有名なハタネズミの話に移る。草原ハタネズミと山岳ハタネズミで、見た目はほとんど区別がつかないが、前者はモノガミスト、後者は遊び人(遊びネズミ?)である。なぜ草原ハタネズミはモノガミストなのか?それは彼らの報酬系にオキシトシン、バソプレシンの受容体が豊富だからだ。すると一度交尾した際に大量に分泌される両ホルモンのおかげで、相手のことを忘れられなくなるという。そこで実験をしたという。ある草原ハタネズミを一緒にして、ただし交接が出来ないようにして(ひどいことをするものだ)、この二つのホルモンを注射すると、「付き合っていない」のに、そのハタネズミはその相手と離れることはなかったそうだ。そして、ここが面白いのだが、オキシトシン、バソプレシンは、例えば羊が赤ちゃんを産んだ時にも出て(なぜいきなり羊か、と言えば、羊で実験したデータに基づいているからだ。女優の吉田羊とは関係がない。)やはりオキシトシン、バソプレシンが出て、するとその赤ちゃんを忘れなくなる。そしてそれを阻止すると、赤ちゃんを覚えられない、という。

 ここで私は予言したい。初期の「刷り込み」(ガンやカモが、生まれた時に見たものを刷り込まれて、例えば人の後を追ってしまう、など)にも絶対に関係しているだろう。ガンやカモが生まれた時には、オキシトシン、バソプレッシンが盛んに分泌されて、だからその時見たものを覚えているはずだ。これってすごくないだろうか?一目ぼれだってそうだろう。その人を見た時、一方では扁桃核の細胞が感作され、同時にオキシトシン、バソプレシンが出ているのではないか?だからその人のことを忘れないのだ。報酬系はそんなことにも関与しているのだろう。