2016年6月4日土曜日

愛 ①

報酬系から見た愛、または報酬系は男女でこんなに違う

こんな項目を立ててみたけれど、書けるかなあ。自信ないなあ。いつも行き当たりばったりだ。 まあ「男女の差」、というテーマはそれ自体が興味の的だから、報酬系と少し離れてもあまり目立たないだろう。ネタにすべき本は何冊かあるし。まずは「だから、男と女はすれ違う」(NHKスペシャル取材班、ダイヤモンド社、2009年)から参考にしよう。
 男女の問題はそもそも報酬系と深く関連している。ニューヨークのヘレン・フィッシャー博士の研究がよく知られている。(Helen Fisher: Anatomy of Love. Ballantine Books 1994) 彼女はある実験で熱烈な恋愛状態にある男女の脳の状態をfMRIで観察した。すると、腹側被蓋野と尾状核の先端部分の興奮が見られたという。これは脳の報酬系がフルに活動をしているということだ。読者の中には恋愛をしているときのルンルン気分を思い出す方もいるかもしれない。心がウキウキしてスキップをしたくなるような気分。恋人といると時間があっという間に過ぎていく。そんな状態のことだ。
同様の研究ではゼキ博士 Semir Zeki とポスドクのバーテルス博士 Andreas Bartels の研究も興味深い。恋愛状態にある人の脳で、どこが抑制されているかを見た。すると扁桃核と頭頂・側頭結合部が抑制されるというのだ。扁桃核は不快を体験し、頭頂・側頭結合部は物事の総合的で理性的な判断をつかさどる。これらの部分が恋人の写真を見ているときに抑制されるということは、恋人に関しては冷静な判断を失うということを意味するという。読者は、報酬系が倫理観を麻痺させるという私の主張を覚えていらっしゃるだろうか?(どうせ読んでないって。)ちなみにこんな論文もタダで手に入ったぞ。やった!原資なし。今日はついてるぞ。
S. Zeki : Minireview (2007)The neurobiology of love. FEBS Letters Volume 581, Issue 14; 25752579 
A. de Boer, E.M. van Buel, G.J. Ter Horst (2012) Love is more than just a kiss: a neurobiological perspective on love and affection. Neuroscience. Volume 201,Pages 114124.
ゼキ先生によれば、恋愛に関係しているのは、前帯状回、内側島皮質 medial insula、海馬、線条体、側坐核などだという。あれ?フィッシャー先生の書いていることとちょっと違うぞ。フィッシャー先生の最新刊を注文したから、来たらどうなっているかを確かめてみよう。

ところでこの島皮質、実は不思議なことがわかっている。ここが破壊されると、渇望が消えるというのだ。脳卒中などで島皮質が破壊されると、それまでのヘビースモーカーがタバコを吸いたくなくなる、などのことが知られている。ということはこの部分の興奮は、対象に対するしがみつきを生んでいる?ボーダーさんは結局島皮質の過活動なのか?