2016年6月11日土曜日

愛 ⑧

セロトニン
これについてはあまり書いていないし、報酬系と少しずれるのだが、最近の議論として恋愛状態と強迫神経症が似ているじゃないか、という話があるらしい。そもそもセロトニンと副腎皮質ホルモンにはシーソーの関係がある。ということは副腎皮質ホルモンの高まる病気では、セロトニンが低くなり、それにはOCD(強迫神経症),鬱、不安障害などが挙げられるという。要するにSSRI(抗鬱剤)が効く状態、と考えると分かりやすい。そして恋愛している時も、同様に相手のことばかりを考え、強迫的になっているから、両者は似ていると主張する学者がいるという。ただし両者は全然違うと私は思うのだが。でもそのように考えると、恋愛状態にある人にSSRIを飲んでもらうことには問題が生じるということになろうか。そしてこれとおそらく関係しているだろうが、SSRIを服用した人に最も多い不満が、「性欲が低下する」という訴えだということなのである。おそらく両者はかなり関係していると思われる。
余計な話。先日NHKの「ダーウィンが来た」を見ていて、またピンときた。クジャクグモというクモの話をしていたが、彼らは交尾の時、雄がダンスをして、メスが気に入ると交尾し、気に入らないと食べてしまう、という。オスはダンスをしながら徐々にメスに近付いていくが、最後はダンスをこわごわとする。なぜなら下手をすると食べられてしまうからだという。いつも逃げられるように及び腰でダンスをするのだ。私の想像だがおそらくここにもバソプレッシンが関係しているだろう。オスのダンスは、メスの報酬系をいたく刺激するが、オキ、ではなくてバソ、の方が出てしまうと、交尾ではなくて食べられてしまう。微妙なバランスなのだ。
ちなみにさっそくHelen Fisher Anatomy of Love 増補版を取り寄せて読んでいるが(2016年の本、3000円した。投資である。) バソは結構侮れないということが書いてある。草原ネズミが射精した時に放出されるバソプレッシンは、彼をモノガミストにするという。童貞の草原ネズミの脳にバソを注射すると、実験室内の籠の中で早速テリトリーを作り出す。そしてお見合いさせたメスの草原ネズミには、一発で一目ぼれをして、それからつがいとなる。

 この話は例のお見合いの話に修正点を促す。男性の側に向けられた「加湿器」には、バソプレッシンを加える方がいい、というわけだ。