2016年5月30日月曜日

精神科医の夢 ②

レバーを押し続けるネズミ
報酬系に少しでも関心がある人にとっては常識とも言える実験がある。念のために振り返っておこう。
 1954年のことだから、私が生まれる二年前だ。米国カリフォルニア大学にジェームス・オールズ教授とピーター・ミルナー教授という二人の学者がいて、ネズミを使った実験を行った。ネズミの脳の様々な部位に電極を入れ、ネズミ自身がレバーを押すことで弱い電気が流れ、脳内のそれらの部位が刺激するという装置を作った。彼らは動物の動機づけを知る上で、網様体賦活系というところを刺激することを考えていたという。そしてその部分に電極を差したつもりになっていた。そしてラットの反応を見ていると、どうやらその刺激を欲していることをうかがわせる行動を見せた。そこでラットをスキナーボックスに入れてみた。スキナーボックスには様々なレバーや信号や、それによる報酬を与える仕掛けが備わっている。そこでレバーを押すとラットの脳の該当部位に信号が流れるようにした。すると・・・・ラットは一時間に2000回という記録的な頻度でレバーを押すようになったのである。
ここで定番の写真である。大抵この実験を説明する文には、このネズミの写真が付きものである。せっかくだから掲載しておきたいが、無断コピペである。口外しないでほしい。
ここから先は、ネタ本「脳が『生きがい』を感じるとき」(グレゴリー バーンズ (), 野中 香方子 (),日本放送出版協会、2006年)の助けを借りる。

ともかくもオールズ先生らの実験の興味深いところは、ネズミは寝食を忘れて死ぬまでレバーをを押し続けた、というところであるが、おそらくこの実験が革命的であったことは間違いない。それまでどうやら脳というのは、そのどの部分を刺激しても不快感しか生まず、ネズミはそれを回避する傾向にあったという。(ああ、このネズミになりたい。)