昨日書いているうちに思い当たった。この「負けるかもしれない」けれどアツくなる心理、虐待と似ているのである。
さっそく書かなくては。虐待とロスチェイシング。このような話はとにかくよく聞くのだ。思いつく話。精神療法を学ぼうとしている人が、「精神分析の道は厳しい。悪いことは言わないからあきらめた方がいいよ。」といわれて、がぜん精神分析の道を歩んだ人の話。あれ、これあまり例になっていないか? 私の不妊治療にあたっている人の話。「この方法は高価だし、妊娠する確率は低いですよ。それでもいいんですか?」と問われて俄然「この方法しかない」と決意を固める人の話。これもあまり典型的な例とは言えないかもしれない。するとやはり、パートナーとの関係で、DVの被害に遭うことがわかっていながら、その関係を続けたくなるという心理。
あるいは人生そのものか。死ぬと分かっていながら、どうして生きるのだろうか?というより死ぬからこそ生きる勇気が湧くのはなぜ?
渇望が起きている時、脳の中で起きている変化
S. D. NORRHOLM, et
al. (2003) Cocaine-induced Proliferation of Dendritic Spines in Nucleus
Accumbens is Dependent on the Activity of Cyclin-dependent Kinase-5. Neuroscience 116 (2003) 19–22
というすごーい論文がある。脳内の側坐核というところが、食塩水を与えたラットと、コカインを与えたラットで、それを切った後、どのような変化を起こしたかという図である。
この研究でわかったことは、コカイン依存症はおそらく、この脳内の変化、神経伝達をより活発化させるような脳の変化に関介しているということだったという。軸索のトゲトゲの増加がそれである。このトゲトゲがシナプスの量を表すと考えればいい。
コカインは脳内のMEF2というたんぱく質を阻害する。このMEF2は軸索のトゲトゲとげとげの生成を抑える作用があるので、それを止めることで、トゲトゲを増やしたというのだ。
ところがこの話には後があるようだ。ネットにはこんな記事があった。
Dendritic spine
proliferation seems to compensate for some impacts of cocaine use. October 01, 2010 Carl Sherman,
NIDA Notes Contributing Writer
上の論文から数年後の話だ。コカインがMEF2を抑える作用を阻害する薬を一緒に与えた。するとトゲトゲが減ったが、そうするとネズミはもっとコカインを欲しがるようになったという。ということはトゲトゲは、コカイン依存を制限するように働いていたということになる。コカイン依存を起こしている脳内の変化はどこか別のところにあって、トゲトゲはそれを行きすぎないように押さえているという話だ・・・・。なんだかよくわからなくなってきた。