2016年3月2日水曜日

報酬系 20

全く理論的には進展がない。漂っている状態である。どうしてもわからないのだ。繰り返そう。ネズミはレバーのある隅に向かう。そしてレバーを押す。快感中枢に電流が流れ、快感を得る。でも隅に向かっている最中、あるいはレバーを押し始める際には快感中枢は刺激されていない。それ自体は気持ちよくもないことをなぜするのだろうか?実はCエレガンスにも同じことを考えたが、その場合は濃度勾配ということで説明を付けた。ということはこうだろうか?レバーを押すことと快感の記憶とは結びついていることは間違いない。ということは快感を思い出すことがすでに快感なのだろうか?もしそうだとすると濃度勾配と同じ説明がつくことになる。…。とか何とか書いているうちに、あれ?答えが見つかった?
 忘れないうちに書いておこう。「脳から見える心」(岩崎学術出版社、2104年)で私は実はかなりしつこく報酬系について扱っている。なーんだ、第三部なんて3章も書いているじゃん。書いた本人が忘れているからね。そこで私が書いたことは、報酬系は実は予測による、いわば「先取り快感」を扱う場所であるということだ。ネズミの例で書こう。ネズミはいつもは近づけない快感のレバーに、今日は近づけることを知って「やった!」と思う。(ちょっと後付だが、ネズミは普段はそのレバーに触れないような仕組みになっているとする。それと報酬は、快感中枢の刺激ではなく、例えばジュース一滴だったとする。)この「やった!」はすでにドーパミン系ニューロンを刺激しているのだ。ところが実際にジュースを口にしたとき、肝心のドーパミン系ニューロンは興奮を見せない・・・・・。報酬系は実はそんな性質を持っている。実際にジュースを口にしたときの「本当の」報酬を得ている時は、中脳水道周囲灰白質というところが刺激されている。いわゆるPAGPeriaqueductal gray matter)といわれているところだ。ということは仮説は以下の通りになる。
実際の快の獲得以前に、快を得られるという予測は、それ自体が快である。そしてそれぞれは別のシステムなのだ。前者は側坐核やMFB(内側前頭束)であり、後者はPAG(多少詳しい位置は違っているかもしれないが、二つに分かれていることは間違いない。)そしてそれはおそらくCエレガンスやウナギの稚魚や雌鮭を駆動しているのと同じシステムなのである。つまり微かな匂い勾配と同様の、快の勾配が存在する。ある行動に出る間はそれが持続的に興奮することで、微弱な快を与える。Cエレガンスは匂いのもとに正確に向かっている時は、ウナギの稚魚は目指す川に向かっている間はその快感は持続する。これで説明された!!