このシリーズを終えるに当たり、関係精神分析学の機関紙ともいうべきサイコアナリティック・ダイアローグに掲載された論文をざっと見ながらどのようなテーマが過去5年間に掲載されているかを知り、それで最近の動向をうかがい知る、ということでお茶を濁したい。(この雑誌 "Psychoanalytic Dialogues" を、PDと以下に記そう。)奇しくもPDは今年で25周年を迎える。最初に出版されたのが1991年の1月である。スティーブン・ミッチェルが創始したこのジャーナルは、最初は小さなグループによるものであったが、今は数百の著者、70人の編集協力者を数えるという。最初は年に4回だったのが、1996年にはもう年に6回も出版されている。
そこで、えーっとどうしようか。各号はパネルとして、代表的な論文とそれに対するコメントがいくつか、あとはその他の論文、ということになっている。そこでパネル論文を取り上げてみよう。
第1巻
「精神分析の理想と否認されたもの:ウィニコットと彼の患者」(Joyce Slochower)
「右脳:精神分析の中核にある黙示的な自己」(Allan N. Schore)
「融合と創生:精神分析中の間主観性についての非線形的なポートレート」(William J. Coburn)
「右脳:精神分析の中核にある黙示的な自己」(Allan N. Schore)
「融合と創生:精神分析中の間主観性についての非線形的なポートレート」(William J. Coburn)
第2巻 特集:トランスジェンダーの主体性:理論と実践
「トランスジェンダーの主体性」Goldner, Suchet, Saketopoulou, Hansbury, Salamon & Corbett, and Harris
第3巻
「ギルとブロンバークのやりとり」(Philip M. Bromberg)
「ノスタルジア」(Avishai Margalit)
「ノスタルジア」(Avishai Margalit)
「無意識に構成された仮想上の他者」 (Arnold H. Modell)
「生きることは裏切ることである」(Eyal Rozmarin)
「生きることは裏切ることである」(Eyal Rozmarin)
第4巻
「カウチの上の女性:性器への刺激と精神分析の誕生」(Karen E. Starr and Lewis Aron)
「ポリリズミックな模様と文脈上の調律」(Steven H. Knoblauch)
「2.0の現実:喪失が喪失した時」(Stephen
Hartman)
第5巻
第5巻
「ヒステリーと辱め」(Sam
Gerson)
「並行同一化:トラウマ的な嫉妬に対する防護壁 」(Stephanie Lewin)
第6巻
「分析的な影の外で:記念されるべき儀式の力動」(Joyce Slochower)
「主体を形作る:プライベートな記憶と公的なアーカイブ」 (Gillian Straker)
これで一年分だ。もちろんそれ以外にもこの特集に入ってこないような単独の論文も掲載されている。結論:ここに一つの傾向を見ることなどできない。実に多彩な内容が論じられているというしかない。もちろんタイトルだけではにわかにその内容が把握できないものもまた多い。一本一本を読む気にもさすがになれない。ということでこの計画は中止である。それにしても、えらくテキトーなシリーズだったなあ。