2015年6月28日日曜日

自己愛(ナル)な人(16/100)

木嶋佳苗について書き足すつもりでいたのに、本が届かない!でも書くべきことはまだたくさんなるな。ヘアの本を読み直そう。
「成功したサイコパス」がナルシシストになる
ここまでサイコパス型のナルシシストについて論じてきたが、読者はまだ次の様な疑問を抱いているかもしれない。「ではサイコパスはみなナルシシストか?」
この問いについては、言葉の定義に戻って考えてみよう。サイコパスとは要するに人の心に共感できないので、いくらでも他人を利用する人だ。しかし他人を利用する仕方はいくらでもあるだろう。詐欺を働いてもいいし、殺人を犯して金品を強奪するという手もある。しかし彼らの中には、人から尊敬されたり、畏れられたり、恋愛感情を向けられたりすることをとりわけ好む人たちがいる。彼らがその目的のために用いるのは、嘘であり、見せかけの優しさであり、時には恫喝である。そして彼らが最終的に自己愛が満足するような状況を作り上げることが出来るかは、それらの嘘や優しさの表明や恫喝の「巧みさ」なのだ。
 いかにサイコパスが人を欺こうと必至になっても、彼らのスキルが半人前であったら、人はすぐにその虚偽性を見抜いて去っていってしまうであろう。サイコパスが最終的に自己愛を満たすためには、彼らが「巧み」でいい仕事が出来なくてはならない。そのためには自分の魅力と限界を知り、どのような振る舞いが成功に導き、どのような振る舞いが逆効果なのかをよく知っておく必要がある。そうでないと、自己愛を満たすまでのレベルにまで至らないのである。その意味ではサイコパス型のナルシシストは、その中でもごく一部の、ある意味で才能ともいえるような能力を備えた人と言い切っていいだろう。

ここで成功したサイコパスに共通したひとつの要素を見出すことは難しいだろう。人が誰かに魅力を感じるための要素は千差万別である。それは美貌であったり、歌のうまさであったり、人の操作の巧みさだったりする。時には性的な魅力を用いることの巧妙さだったりする。木嶋佳苗の写真を見て、おそらく多くの人が思ったであろう。「一体全体どうして彼女に複数の男性はだまされたのだろう?」木嶋の顔写真は多くの男性が見とれてしまうようなそれでは決してない。それでも彼女が複数の結婚詐欺により多額の金を得ることが出来た秘密は、彼女自身が誇らしげに自著で語っている「性的な魅力」かもしれないし、あるいは本人がまったく気がついていないような魅力かもしれないのだ。
 しかしこのように考えていくと、ひとつ重要な疑問にいたる。世の中で成功している人たちは、この成功したサイコパスと本当に大きく違うのだろうか?
 本書の冒頭で述べた「勝ち組は自己チュー」を思い出していただきたい。実は社会での成功者をまず取り上げ、その中に、サイコパスの要素を見出すことは、意外なほどに容易なのである。ということは私たちの身の回りにも、国会にも ・・・・・・・。