恋愛詐欺のナルシシスト
サイコパスは人を利用するためには手段を選ばない。男性なら男性的魅力や経済力、女性なら性的魅力を惜しみなく利用して相手を騙す。彼が利用するのは他人ばかりではないのだ。彼らが「成功したサイコパス」であるなら、それだけ自信にあふれ、魅力的に見え、その分相手に付け入るすきを与えることにもなろう。というわけで恋愛詐欺、結婚詐欺は、サイコパス型自己愛者の格好な活躍の舞台ということになる。
一連の婚活詐欺殺人でその名の知れ渡った木嶋佳苗被告のことを覚えていらっしゃる方も多いだろう。彼女もまた典型的なサイコパス型自己愛者だったと言える。
事件の概要を少し振り返ろう。(御免。以下の2パラグラフ、かなりウィキから取った。自分がサイコパスではないと信じる私はここで白状する。)2009年8月6日、埼玉県富士見市の月極駐車場内にあった車内において会社員男性C(当時41歳)の遺体が発見された。死因は練炭による一酸化炭素中毒であったが、自殺にしては不審点が多かったことから警察の捜査が始まった。その結果、Cは被疑者の住所不定・無職の女性、木嶋佳苗(1974年11月27日生まれ、当時34歳)と交際していたことがわかり、捜査していくにつれて木嶋にはほかにも多数の愛人がおり、その愛人の何人かも不審死を遂げていることがわかった。埼玉県警は木嶋が結婚を装った詐欺をおこなっていたと断定し、9月25日に木嶋を結婚詐欺の容疑で逮捕した。また、逮捕時に同居していた千葉県出身の40代男性から450万円を受け取っていた。
2010年(平成22年)1月までに、木嶋は7度におよぶ詐欺などの容疑で再逮捕されている。警察は詐欺と不審死の関連について慎重に捜査を継続。2月22日に木嶋はAに対する殺人罪で起訴された。窃盗罪や詐欺罪などですでに起訴されており、あわせて6度目の起訴となる。10月29日には東京都青梅市の当時53歳の男性を自殺にみせかけて殺害したとして警視庁に再逮捕された。ただし、被害者男性の遺体は、当時は「自殺」と断定されて解剖されていない例もあり、死因に関する資料が乏しい中での、極めて異例の殺人罪の立件となった。(Wikipedia「木嶋佳苗」の項目より恥も外聞もなく引用)
木嶋は獄中にありながら、ブログを更新し、今年になって自伝的小説「礼讃」を発表した。中には現代の女性に向けてこんなことが書いてあるという。
「女同士の付き合いにかまけて、男性を大切にすることを忘れてしまったのではないか」「私は男性に対して演技をしたことはない。男性が望むことをするのが、私にとっての喜びであり、それが自然な行為だった。―中略―(男たちの抑圧された心の奥を汲取ることで)そうした心の深いところから無意識に湧き出たもののふれ合いは、セックスより強力な接着剤になる。その上、セックスも良ければ、離れられないのは当然だろう」。
「女同士の付き合いにかまけて、男性を大切にすることを忘れてしまったのではないか」「私は男性に対して演技をしたことはない。男性が望むことをするのが、私にとっての喜びであり、それが自然な行為だった。―中略―(男たちの抑圧された心の奥を汲取ることで)そうした心の深いところから無意識に湧き出たもののふれ合いは、セックスより強力な接着剤になる。その上、セックスも良ければ、離れられないのは当然だろう」。
保険金殺人をした女性がどうして人さまに説教をする心境になれるのだろう。これだけでも驚くべき自己愛である。しかも彼女は男性を救済していたかの書き方をしてあるのだ…。これはかなりのナルである。しかも彼女にとっては関係した男性に被害を与えたという実感すらなさそうである。
一般にサイコパス的な自己愛者がどうやって自分の行為を正当化するのかという問いへの答えがこの木嶋の筆致にある。彼(女)は自分のかかわりが喜びや興奮を他人に与えていると感じる。自分が彼らを救済しているかのようである。まるで彼らが死んだのは自業自得であるかのように。