2015年5月7日木曜日

精神医学からみた暴力 (13)


アンドリューズとホンダという研究者はこれらの理論を踏まえて「RNR3原則」というのを導いているという。リスク原則、ニーズ原則、反応性原則だということだが、なんだか難しいなあ。でもこれらが守られないと、犯罪者に対する効果は台無しになるどころか、再犯率は少し増えるという。そこで重い腰を上げて紹介する。
まずリスク原則。再犯率が軽い人に、インテンシブな治療をするな、ということだ。そうすることでお金がかかる上に再犯率も上がると伝えている。ウィスコンシン矯正局の研究では、低リスクの人に低強度の治療をしたところが再犯率は3%だったが、高強度にしたら10%だったという。ちなみに低強度の治療とは、自習とか視聴覚教材を用いたもの、高強度とは11の面接などだという。ここら辺は暴力の話と少し外れるが、刑務所などでは模範囚には手厚い「治療」の場が提供される一方では、反抗的な囚人はほっとかれるということが起きているという。その逆を行け、というわけだ。その方がお金の無駄使いにならなくていいという。フーン、少しわかるような気がする。要するに重い人ほどさじを投げるな、ということらしい。もっと言えば、軽い人はもうあまり刑務所にとどめるな、ということか。いや、これは極論かもしれないが。
ニーズ原則は、これを説明するためには犯罪にまつわるセントラルエイトの記述が必要だ。面倒だなあ。まあそういわず。犯罪にはいくつものリスクファクターがあるが、アンドリューズらはそれを8つに絞った。①反社会的認知、②敵意帰属バイアス、③性犯罪者の認知のゆがみ、④反社会的交友関係、⑤家庭内の問題、⑥教育、職業上の問題、⑦物質濫用、⑧余暇使用であるという。(それぞれの説明は後回しにしよう。)そのうちたとえば⑦の問題しかない人には、それに集中した治療、つまり薬物乱用への対処を行い、同じように、④、つまり悪い連中とつるんでいることが問題な人にはそれに対する治療を行うという意味だ。
 反応性原則とは要するに、効果があることをせよ、効果がないことをしても仕方がない、というもので、そこには効果がないものとして、アニマルセラピーや精神分析が挙げられている。受刑者が動物に触れるのは確かに情操教育に効果的と直感的に感じるが、再犯率には関係がない。そのような直観に従った「治療」を私たちはしがちであり、真に効果的な治療、すなわち認知行動療法を行うべきだ、と言っている。