2015年5月6日水曜日

精神医学からみた暴力 (12)

ということで読書をしてみよう。何か新しいことが見つかるかもしれない。選んだのは、「入門 犯罪心理学 原田隆之著」である。(と言っても書店ですぐに目についたからね。安いし。)
呼んだ範囲で私が一番重要だと思ったのは、治療に関する部分だろうか?犯罪者には何をやっても駄目だ、という「犯罪者治療悲観論」は、もう過去のものであるという。1970年代に有名なマーチンソンの研究があり、何をやってもダメ、という結論さえ出て、それからアメリカは犯罪の厳罰化の方向に動いた。しかしそれは奏功せず、結果として刑務所はどこも満杯状態になってしまったという。(ちなみにアメリカの刑務所の収容人口は、1980年代から激増して、250万人であるのに対し、日本では63千人であるという。)ところがこのマーチンソンの見解は、その研究として彼が含めて治療としていた中に、保護観察、刑罰、刑務所収容までも含まれていて、改めて治療的なものだけを選んで調査をした結果、約半数に治療効果がみられていることがわかり、その後マーチンソンは自説を撤回し、自殺をしてしまったという。そしてその後リプセイという研究者により、犯罪者の治療についての研究がまとめられたが、それはそれまでの悲観論を大きく変えるものであったという。そこでの結論が興味深い。それは3点にまとめられるという。1.処罰は再犯リスクを抑制しない。2.治療は確実に再犯率を低下させる。3.治療の種類によって効果が異なる。
つい数日前、治療は効果がない、と言っていた自分が恥ずかしいな。
1.については、抗菌や保護観察は逆にわずかだが再犯率を上げてしまうという。これについては省略だが、厳しく罰すれば犯罪を抑えられるという常識的な考え方が通用しないというのである。2.は驚きである。適切な治療を行った場合の再犯率が35%、行わなかった場合が65%であるという。これはまさに私が勘違いしていた点ということになるだろう。そして3.適切な治療とは、認知行動療法、行動療法であり、それ以外の療法、たとえば精神分析やパーソンセンタード・セラピーなどでは再犯率にほとんど影響はなかったという。それと治療を行うなら拘禁下よりも社会で行う方がいいという。
私は実はこれを書きながら泣きそうになっている。私は分析家である。精神分析がこれほど明らかに分が悪いと書かれるとひどく傷つくのだ。ただし分析家たちは「もともと私たちは反社会的パーソナリティなどは治療の対象外ですから」と平然と言うのだろうか・・・・。