2015年1月16日金曜日

解離NOS診断の変更


今朝は朝から町が焦げ臭いと思ったら、「京都の喫茶店『ほんやら洞』全焼」だって。バスもなかなか進まなかった。

一昨夜は院生さんたちとゆっくり話す機会があった。いろいろ彼らも考えているんだなあ。

解離のNOS(ほかに分類されない解離性障害)についてちょっと追加した

最初に―NOS診断の変更

解離性障害に誤診はつきものと言っていい。本章では現代的な見地から再び解離性障害の診断で問題になるほかの疾患との鑑別の問題について論じたい。
その前に解離性障害の診断についてひとこと述べたいことがある。それは解離性障害の診断は「ユルめ」につけた方がいいということである。解離性障害にはDIDを筆頭にいくつかの種類があるが、十分な根拠に乏しい場合には「解離性障害」の診断にとどめておくべきであろう。たとえば内部にいくつかの人格部分の存在がうかがわれる際にも、それらの明確なプロフィール(性別、年齢、記憶、性格傾向)が確認できない段階では、特定不能の解離性障害(unspeficied dissociative disorder)としておくことが適当である。また解離性の遁走のエピソードがあり、それが主たる訴えとなっている場合、その背後にDIDが存在する可能性を考慮しつつも、初診段階では解離性遁走の診断に留めるべきであろう。解離の診断は治療関係が深まり、聴取される生活歴や出会うことのできる人格部分が広がるにつれてより正確なものとなっていく傾向にある。
ただしこの「特定不能」という診断は、従来の「ほかに分類できない解離性障害」(いわゆる「DDNOS」とは少しニュアンスが違っていることには気を付けるべきであろう。従来のNOS診断は、単なる「ゴミ箱」ではなかった。DSM-IV-TRではそれらは1.DIDの不全形、2.成人における現実感喪失で、離人症を伴わないもの、3長期間にわたる協力で威圧的な説得(洗脳、思想改造、または人質になっている間の教化)を受けた人に起こる解離状態。4.解離性トランス障害(いわゆる文化結合症候群など)5.一般身体疾患によらない意識の消失、昏迷、または昏睡。6.ガンザー症候群などの、いわば「下位分類」が設けられていた。その結果として多くの解離性障害(全体の40%)がこのNOS not otherwise speficied に入ってしまうという問題があったのである。
 DSM-5 ではこの点の改善があった。すなわちこのNOS診断が二つに分かれたのである。それは「他の特定される解離性障害other specified dissociative disorder」と「 特定不能の解離性障害 unspecified dissociative disorder」である。そしてこれまでのNOSは前者の「ほかの特定される」にほぼそのまま横滑りした形にしている。そして後者が本来の意味での「ゴミ箱」診断となっている。これは要するに「ゴミ箱」を小さくし、分類できるものはしていこうというDSM-5の方針の反映といえよう。

鑑別診断の話に戻ろう。解離性障害の併存症や鑑別診断として問題になる傾向にあるのは以下の精神科疾患である。統合失調症、BPD(境界パーソナリティ障害)、躁うつ病、うつ病、てんかん、虚偽性障害、詐病、など。これらの診断は必ずしも初診面接で下されなくても、面接者は常に念頭に置いたうえで後の治療に臨むべきである。