2014年12月16日火曜日

米国における精神科レジデントトレーニングとスーパービジョン



私が体験した米国での4年間の精神科レジデントトレーニングおよびスーパービジョンについて報告する。1989年から1年目(「インターン」と呼ばれ、6か月の一般内科と神経内科、6か月の精神科の研修)をオクラホマメディカルセンター(オクラホマ州)において行い、1990年から1993年まで、2~4年目をメニンガークリニック(カンザス州、トピーカ)にて行った。そこでレジデントトレーニングを支える三つの柱を経験した。第1は定期的な対面方式でのスーパービジョンであり、第2にはレジデントによるスーパービジョンの逆評価のシステム、そして第3には専門医試験に向けた定期的なモックボード(模擬試験)である。
そのうち第1のスーパービジョンに関しては、4年間を通して経験する様々なクリ二カルアサインメントにおいて、現場での上級スタッフにより週一回、50分の対面方式で行われ、レジデントの評価もそれに基づいて行われた。第2の逆評価のシステムは、それによるスーパーバイザーからのパワハラの可能性を最小限に防ぐ役割を果たしていた。また第3の模擬試験に関しては、毎年筆記試験のモックボード、および第2、第4学年における口頭試問(30分の精神科診断面接)のモックボードが行われ、間接的な評価の対象となった。米国のトレーニングに特徴的なのは、クリニカルアサインメントにおいてレジデントはスタッフと同等レベルの「戦力」を果たすことが前提となり、実際に病棟や外来の主治医として働くことを期待されることである。またレジデントは病院での夜間の当直業務をこなし、それが重要なアルバイト収入となるとともに実地のトレーニングの機会ともなっていた。私は日本での精神科研修を終えてから5年目にこのレジデントトレーニングに参加したが、精神医学を一から学びなおした思いである。