2014年9月14日日曜日

治療抵抗(3)


 抵抗の概念はそれ以後さらに変わっていく。そのうち抵抗は衝動や歪曲の原因となるもの、と理解されるようになった。少し整理しよう。
● フロイトにおける抵抗概念の変遷
最初は外傷記憶の想起に対するもの → 受け入れがたい衝動に気付く事への抵抗 → 歪曲の原因なんだということになった。つまり夢の検閲官と同じであり、絶えず働いている装置、という考えに発展していった。

● 抵抗の起源と形態

1912年までに、フロイトは転移抵抗と抑圧抵抗の区別を行った。抵抗概念がこうして発展を開始した。分類により概念は豊かになっていく。
転移抵抗:やがて姿を消すかもしれず、転移性愛着に置き換わり、治療を促進するかもしれない。
抑圧抵抗:患者の心的構造に内在するもの、危険ないしは苦痛な衝動や記憶に気付くことに対するもの。
1923年の「自我とエス」、1926年の「制止、症状、不安」以降において、抵抗は超自我や外界からも生じるものという理解が得られた。

5つの有名な抵抗の分類
(1)抑圧抵抗:一次疾病利得(抑圧内容を症状形成により解決する結果として得られる利得)の反映である。苦痛に満ちた心的内容に気付くことから個人を守る「最後の手段」としての神経症症状。自由連想は解釈を通してそのような内容が患者にとって耐えられるような形で扱われるような方法。
(2)転移抵抗:抑圧されたり、症状形成などにより扱われてきた素材を、現実のこの場での歪曲という形で再活性化させる。分析者について「考えない」ことをも含む。
(3)疾病利得に由来する抵抗:病気により他者から世話をされたり同情されたりすることによる満足、攻撃的復讐的衝動の満足。隠された処罰欲求、自虐的傾向、補償神経症など。
(4)エス抵抗:ワーキングスルーが必要なもの。「学習消去」への抵抗。
(5)超自我抵抗:患者の処罰欲求や罪悪感に根差す。(=二次疾病利得?)「最愛の息子になりたいという願望や同法に勝ちたいという願望に対する罪悪感」など。もっとも強烈な形態としての陰性治療反応。

   防衛と抵抗との関係

抵抗は必ずしも防衛、というわけではない。抑圧(≒防衛)ではない抵抗というものもある。このことは上のリストからも明らかである。例えばエス抵抗は抑圧とは直接関係ない。転移抵抗も同様である。フロイトは分析の進展を妨害することはすべて抵抗と考えた。しかしその後自我心理学の発展として与えられた新たな考えは、防衛の分析自体が、精神分析のプロセスなのだという考えであった。ライヒは、それを分析の前面に出すべきだと考えた。それに反対したのがアンナ・フロイトとステルバだった。(確かに分析家に振る舞い分析をされるのは、時に侵入的になるというのもわかる。)その後フロイトは抵抗として様々な要因を考えるようになった。
欲動の生得的な素因的強度、転移に反映されない葛藤など。
その後も抵抗と防衛との関係についての議論が続いた。
ブラム:防衛の概念は、抵抗よりも広い。ただしどちらも、広義と狭義のどちらの立場をとるかにより、関係は異なるのではないか。例えば
広義の抵抗≧狭義の防衛
狭義の抵抗≦広義の防衛 のように。
グリーンソン:抵抗は神経症の現状維持を防衛するもの。
ストーン:自由連想は、抑圧された願望や衝動の表現を誘うため、抵抗の高まりを誘う。
少なくとも抵抗には多くの形態がある、という理解は重要であろう。
直接には観察できない抵抗と(抑圧された願望や空想や記憶)、抵抗の観察可能な兆候(たとえば沈黙や眠り)との区別。
グラバーのむき出しの抵抗(遅刻、婉曲な言い方、分析者への機械的な否定、曲解、ばかなふり、など)表立たない抵抗(見かけ上の従順さ、分析者の興味のある夢などを持ち込む、など。)後者は分析の流れに「角を立て」ないが、作業全体が進まない。
自我親和的な抵抗と、自我違和的な抵抗。前者については、患者はそれを分析作業への適応と感じる。

12の抵抗の新たな提唱

1. 分析によりそれまでの適応が脅かされることへの抵抗・・・抑圧抵抗を含む防衛機制(適応機制)によるもの。
2. 転移抵抗・・・転移に気付くことへの抵抗と、転移の力動的発生的還元に対する抵抗とがある。ストレーチー:抵抗の最たるものは治療関係で起きる。そのため抵抗の解釈は必然的に転移解釈である。ストーンとギル「転移に気付くことへの抵抗」と「転移を解消することへの抵抗」、分析者の側の「逆抵抗」は、どちらかといえばタブー視させる傾向にあるか?・・・
3. 二次疾病利得に由来する抵抗
4. 超自我抵抗…フェアバーンによる内的対象関係と抵抗との関係についての議論。内在化された批判的で迫害的な人物との内的対象関係を、外の開かれた関係に導く治療。
5. 分析家の誤りや不適切さから生じる抵抗…両者によって知られれば治療的に扱われるかもしれない。そうでなければ、治療の中断につながる。
6. 分析による患者の変化が周囲の人との関係性に及ぶことによる抵抗…例えば自虐的な患者が変化することで結婚を脅かすような場合。
7. 治癒により分析者を失うことへの恐れから来る抵抗・・・陰性治療反応と必ずしも同じではない。
8. 分析作業による恥の感情から来る抵抗。ローゼンフェルトは、自己愛患者の抵抗は、転移関係における攻撃性と羨望、および迫害不安の解釈によってのみ進行する、と述べた。
9. 過去の適応的解決が「脱学習」されることへの抵抗・・・「エス抵抗」を含み、エリクソンの「同一性抵抗」とも関連する。多くの分析家が有用な概念としては受け入れていない。

10.        性格抵抗…ライヒなどにより提唱される。ボースキーはこの概念に反対する。他方では「特有な心理的基盤」が分析の可能性に限界を設けることになるという意見もある。アンナ・フロイトの「自我制限」などはその例。