第5章 「真実と人間の関係性」には気になる文章が現れる。患者の希望は、それが分析家から受け入れられるだけでなく、必要とされること、心地よさをもたらすという認識であるという。そして発達早期にそれが欠如することが関係性の外傷につながる。ブロンバーグはこれを愛と呼んでもいいとさえいうが、精神分析における愛というタブーの領域に踏み込んだ文章である。人間にとって愛されるという体験を、しかも幼少時に持つことが、心の成長にとって決定的な役割を担う。
そこから彼の文章は彼独自の脳科学的な視点を加味し、いよいよ錯綜していく。そこにはポージスやショアといった私たちがこれまで見てきた脳科学者たちの援用があり、ブロンバークがこれらの人々の研究と緊密に連携を取りながら自らの理論を組み立てていることがわかる。
本章ではまた、解離と抑圧、葛藤との関係について繰り返される。ブロンバーグは葛藤理論に反対しているわけではない、と断る。「正常な心理機能としての解離は、通常内的葛藤との快適な弁証法的な対話により作用する」(P125)ただし「解離が絶頂の時、葛藤を構造化する力は、まだ存在していないということである。」
この後に出てきたテーマ、ウィニコットの「一人でいること」と解離との関係がどうしても読み取れない。チンプンカンプンだ。