2014年8月4日月曜日

佐世保の事件

佐世保の事件が気になる。某番組で、某専門家が、10年前の佐世保の事件と関連付け、今回の事件の加害者もアスペルガー障害ではないかと発現し、誤解を招いたとして番組から謝罪があった。私もこの発言は行き過ぎていると考える。このところ臨床現場でも、心理の教育現場でも発達障害の問題が大きく取り上げられる傾向にある。そしてあの人も、この人も、と考える雰囲気がある。これは私自身も「男性的な心の動きにはアスペルガー的なところがたぶんにある」という類の発言をすることが多いため、反省すべきと考えている。他人を害する傾向=他人の気持ちを読むのが苦手=アスペルガー障害 という関連付けは行き過ぎると大きな誤解を招くことになる。私自身は愛すべきアスペルガー障害のかたがたはたくさんいらっしゃると考えている。
私が佐世保の事件から思うのは、
以下NHKNewsWebから(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140802/k10013493361000.html
事件前 「危険な状態」と医師 両親に
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長崎県佐世保市で高校1年生の女子生徒が殺害された事件で、逮捕された同級生の女子生徒を診察していた精神科の医師が、事件の直前の先月、女子生徒の両親と面会し、「危険な状態」で大変なことを起こす可能性があると伝えていたことが、捜査関係者への取材で分かりました。警察は、事件前の女子生徒の言動や精神状態についても調べることにしています。
先月27日、佐世保市のマンションの部屋で15歳の高校1年生の女子生徒が死亡しているのが見つかり、被害者の同級生でこの部屋に1人で住む16歳の女子生徒が殺人の疑いで警察に逮捕されました。
これまでの調べで、女子生徒は動機について「猫を解剖するうちに人を殺したいと思うようになり、我慢できなくなった」などと供述していることが分かっています。
さらに、女子生徒を診察していた精神科の医師が、事件の直前の先月、女子生徒の両親と面会し、女子生徒について「危険な状態」で大変なことを起こす可能性があると伝えていたことが、捜査関係者への取材で新たに分かりました。
警察は事件前の女子生徒の言動や精神状態についても調べることにしています。(下線は岡野が付加)
ここに見られる「猫を解剖するうちに人を殺したいと思うようになり、我慢できなくなった」という供述。私はここにこそ病理を見出すべきであり、この強い、猟奇的な衝動とアスペルガー障害とは別々の問題として捉えるべきであろう。私はこれは反社会性パーソナリティやサイコパスとすら区別すべきではないかとも考える。あるいは別の考え方をするならば、反社会性やサイコパスの中でもより特殊な範疇に属する病理ではないだろうか。これは診断的には「衝動コントロール障害」と理解するべきであろう。しかももっとも恐るべき、そして絶望的な衝動である、「殺人の衝動」である。
たとえば pyromania を考えよう。放火癖と訳される。放火をしたくてしたくてしょうがない。放火をして燃え盛る火を見ていると満足する。性的な興奮すら覚える。同様のことが自らの手で人をあやめ、体を切り裂くことに対して生じる。おそらくその衝動はほかのさまざまな加害行為と結びつく可能性がある。人が苦しむ姿が快感を起こす場合には、ほかのいかなる犯罪にも手を染める可能性がある。現に今回の加害者も異物混入などの事件を過去に起こしている。それでもこの殺人の衝動はそれ以外の反社会的な行動とは独立して、あるいは突出して存在する可能性がある。一環対人関係がスムーズで、善人に思える人にも存在する可能性がある。
決してこの衝動を持つ一群の人間をアスペルガー障害と混同してはいけないだろう。