解離性障害、特にDIDの治療論として特に重点的に述べておかなくてはならないのが、この「子供人格」に関する問題である。
まずは質問形式にしてみた。「子供の人格が出てきたら、どのように扱うべきだろうか?」
というものである。このシンプルな質問に対して、すでに臨床家(精神科医、心療内科医、心理士など)の意見は真っ二つに割れてしまうといっていい。方や「子供の人格は無視する。相手するのは治療的でない」であり、方や「扱うことこそ治療的である」となる。そして現時点では前者の方が圧倒的に優勢という印象を受ける。
もちろんその子供の人格が、誰の前でどのような状況で出てくるかにより、事情は大きく異なる問題でもあろう。治療者の前で、あらかじめ予想された状況で子供の人格が出てきた場合と、夜、恋人の前で突然出てきた場合とではだいぶ事情が異なる。しかしいずれの場合にも、その対処には両極端がありうる。最初から相手にしないか、それとも子供として話しかけるか、である。
ここで子供人格が出現する状況をいくつかあげてみよう。
もちろんその子供の人格が、誰の前でどのような状況で出てくるかにより、事情は大きく異なる問題でもあろう。治療者の前で、あらかじめ予想された状況で子供の人格が出てきた場合と、夜、恋人の前で突然出てきた場合とではだいぶ事情が異なる。しかしいずれの場合にも、その対処には両極端がありうる。最初から相手にしないか、それとも子供として話しかけるか、である。
ここで子供人格が出現する状況をいくつかあげてみよう。
l 受容的な人にあって誘発される場合 ・・・DIDの場合は、自分の子供っぽく依存的な部分を抱えてくれるような人との間で出てくる傾向にある。それはたとえば恋人や配偶者、教師、先輩、友人、治療者などである。ただしそれらの人々に慣れ、その人との関係を安全と感じる場合に限られると考えるべきであろう。
l ある種の動作に誘発される場合 ・・・あるDIDの方は、書店でのアルバイトでポップを書いているうちに、「お絵かきモード」になり、子供人格に変わってしまうことがあるという。また実際に治療場面で箱庭やスクイグルなどを行っているうちに子供人格になる場合もある。
l 視覚、聴覚刺激に誘発される場合 ・・・ プレイルームにDIDの方を誘導した場合、そこにあるぬいぐるみやその他の玩具に刺激されて、より子供人格が出て来易くなることがある。
l ストレスやトラウマを思い起こさせる体験に誘発される場合 ・・・DIDの方が実際に幼児期にトラウマを体験した場合、その時刻に決まってそのときの子供の人格が出てくる場合がある。
l 覚醒状態が低下している場合 ・・・ 多くの子供人格が夜間や就寝前、ないしは眠剤の服用後に出現する傾向にある。この時間帯ないしは状況では覚醒レベルが落ち、大脳皮質による抑制が低下し、一般の人々も退行して子供らしくなる傾向にある。
l 催眠やリラクセーションにより誘導された場合 ・・・ 子供の人格は催眠やリラクセーションにより出てくることが頻繁にあるが、そこには催眠をかける治療者側の受容性ということも関係している。つまり治療者側に子供の人格を受け入れる用意があることで、子供の人格のほうも「安心して」出てこれるということがある。