2014年8月12日火曜日

子供の人格の扱い方(推敲)4


このようなAちゃんの振る舞いがますます彼女のパート先で起き、それが明らかにBさんとの付き合いの中で触発されているとしたら、つまりBさんといることで明らかにAさんが出やすくなり、つまり「出癖」がついてAさんの仕事の害になっているとしたら、これは問題ということになろう。その場合はBさんとの間でAちゃんの出現を抑制するような何らかの手段を講じることでさえ必要になるかもしれない。
ただしこのような形でパート先で出始めたAちゃんがその後どのようにふるまうようになるかは、かなりケースバイケースである。そのうちAちゃんがパートの仕事に適応し、Aちゃんの役割になってしまっている場合もありうる。またAちゃんをたしなめることにより、Bさんとの間では出続けていても、逆に仕事中はAちゃんが抑制されて出にくくなる場合もあろう。
 さて私の臨床経験から言えば、AちゃんがどんどんAさんのパートの仕事を圧迫するというようなことは皆無ではないにしても、かなり少ないように思う。個人的にはそれを体験してはいない。AちゃんがBさんの前で「出癖」が付くことはよくあることだが、仕事にまでそれが侵食することは少ない。そのような印象があるからこそ、Bさんの前でAちゃんがより多く出るようになってきているという話を聞いても、急いでそれをとめたりはしないのである。それに万が一Aちゃんが仕事の「邪魔」をすることが多くなったとしても、それはおそらく治療者やBさんがAちゃんとそのことについてまず話してみる段階であろうし、それはAちゃんにおとなしく寝てもらうということも異なる。

ただしここで一言注釈を加えておきたい。恋人や治療者の存在が子供人格の出癖を生む場合、それがいわゆる「悪性の退行」を呈する場合がある。Bさんと付き合うようになってから非常に我儘にふるまう人格が出てBさんを疲弊させる、ただし両親の前ではいつものようにふるまうということが生じる場合がある。その際はBさんと付き合うという環境そのものが退行促進的であり、本人もそれを止めることが出来ない場合が多い。もし同様のことが治療者との間で生じている場合には、治療の継続そのものを再考しなくてはならないであろう。もちろんそれがAさんにとって大切なパートナーである場合にはその関係を絶つという選択はそれほど簡単には取れないであろうが、長期的に見た場合には安定した関係を築けないであろうことは予測できる。もちろんこの注釈に関しては、これは解離性障害の患者さんにとってのみいえることではない。