ちなみに私が読んだもう一つの論文、というよりはブックチャプター(Almut
Hupbach*, Rebecca Gomezy, Lynn Nadely: Episodic Memory Reconsolidation: An
Update の紹介する実験は、実際の人間を使ったものであるが、やはり興味深かった。何しろ人間が被験者の場合、足に電気ショックを与えるわけにもいかず、アニソマイシンを脳に打ち込むことに同意してくれるわけもないから、ラットに行った実験をそのまま人間に応用するわけにはいかないのだ。
その実験はうろ覚えだがこんな感じだ。あるグループの人たちに20の品物を覚えてもらった後、数日たって集まってもらう。その際グループを二つに分ける。一つの群は数日前の20の品物を漠然と思い出してもらったのちに、新たな20の品物を覚えてもらう。もう一つの群には数日前の20の品物には触れることなく、新たな20の品物を覚えてもらう。さらに数日してから両方のグループを呼び出し、最初の20の品物を思い出してもらう。すると最初に覚えたという彼らの20の品物には大きな違いがあった。
その実験はうろ覚えだがこんな感じだ。あるグループの人たちに20の品物を覚えてもらった後、数日たって集まってもらう。その際グループを二つに分ける。一つの群は数日前の20の品物を漠然と思い出してもらったのちに、新たな20の品物を覚えてもらう。もう一つの群には数日前の20の品物には触れることなく、新たな20の品物を覚えてもらう。さらに数日してから両方のグループを呼び出し、最初の20の品物を思い出してもらう。すると最初に覚えたという彼らの20の品物には大きな違いがあった。
端的にいえば、のちの20の品物を覚えてもらうときに、最初の20を一緒に思い出してもらった最初の群には、多くの混同がみられた。つまり最初の20の品物には、次の20の品物がたくさん混じってしまっていたのである。それに比べて「思い出し」を行わなければ、その混同が非常に少なかった。どういうことだろうか?一度覚えてもらった記憶が、妨害され、書き換えられたのだ。