2014年6月10日火曜日

解離の治療論 (55)


 ショア先生の論文を読むと、解離と右脳との関係(というよりは幼少時のトラウマと右脳の機能不全)については相当いろいろなエビデンスが出されているようだ(D book  P.22)。
霊長類のフリージング状態では、右前頭葉の過活動(直観的には活動低下と思うのだが)とコルチゾールベレルの低下がみられるという。ラットでも右頭頂葉の病変により、条件下でのフリージング現象が起きなくなるという研究もある。とにかく霊長類とか幼児に見られるフリージングとは背側迷走神経の興奮と除脈とが関係し、それはショア先生によれば深刻な病的解離であるという。そしてその理論の支えになっているのが、ポージスPorges 先生の理論、つまり迷走神経は、より新しい腹側と、より古い背側に分かれ、ストレス時には「背に腹を変えられなくなる」という理論なのだ。ここまで生理学的なエビデンスが出ているとは改めて驚く。そうか、解離の理論は脳生理学、発達理論、愛着理論などともすべて繋がっているということだ。知らなかったなあ。
解離において起きていることを明らかにするということは、これまでの恐怖の際のキャノンの理論、つまり「fight-flight  response闘争-逃避反応」だけでは物足りないという。私もこのことについてはいろいろ書いてある。実は3つのFだと。つまり固まり反応freeze response もあるよ。と。ところがそこにもう一つ加わり、それが麻痺反応paralysis であるという。そしてこうなる。危機の際の反応は、
積極的なもの・・・・闘争、逃避
消極的なもの・・・・固まり、麻痺

というわけだ。そして後者の消極的なものは解離に関係づけられるというわけである。このうち固まり反射と麻痺との違いは、前者はまだ意識があるが、後者は意識がない状態ということだが、これは背側迷走神経核の興奮の度合いにより異なるらしい。ショックの際に徐脈になる反応というのが知られているが(fear bradycardia 恐怖徐脈)それがさらに深刻になると失神に至るということだ。