2014年6月9日月曜日

解離の治療論 (54)

いきなりこんな重要なことが書いてある。右脳は、左脳にも増して、大脳辺縁系やそのほかの皮質下の「闘争逃避」反応を生むような領域との連携を持つ。これはそうでなくてはならないだろう。何しろ生後はまずは右脳が働き始めるというのだから。つまり右脳の皮質と皮質下は縦に連携をしていて、この連携が外れてしまうのが解離だ、という理解がある。皮質というのは知覚などの外的な情報のインプットが起きるところだ。それに比べて皮質下の辺縁系や自律神経は体や心の内側からのインプットが生じる場所。そして皮質はその内側からのインプットを基本的には抑制する働きがある。そのことは、この抑制が外れるとき、例えばお酒を飲んだ時にどうなるかを考えれば理解できるのだ。
CANという概念

この右脳の機能をわかりやすく表す言葉として、CANという概念が提出される。これはCNS-ANS limbic circuits の省略形で、中枢神経-自律神経-辺縁系を結ぶサーキットのことだ。上に述べた皮質と皮質下の連携のことである。
このCANは内的、外的な刺激を統合し、目的に沿った行動に貢献するものである。その中では情報が両方向に行き来し、交換、副交感神経のアウトプットを生じさせる。このCANにはさまざまな情報が入るが、それはたとえば母親の一方での興奮と、他方での解離という形で、両方向に引っ張られる。それが極端であると、CANの中の連携がちぐはぐになり、解離を起こすという。そう、解離とはこのCAN内の齟齬、不調和という形をとるのである。
ここでその不調和は、たとえば副交感神経のうちより洗練された腹部の機能から背部の機能に移ってしまうという形をとる。(私はこれを「背に腹は変えられない状態」として覚えることにしている。)