2014年6月3日火曜日

解離の治療論 (48)解離性障害を診断する (2)

あんなことがあると、ネットバンキングなんて怖いね。

このうち幻聴は解離性障害が統合失調症と誤診される最大の症状であるとされる(Bliss, E. L., Larson, E. M., & Nakashima, S. R. (1983). Auditory hallucinations and Schizophrenia. Journal of Nervous & Mental Disease, 171(1), 30-33.)。その特徴としては、内容が多様であること、意味が明確であること、出現が幼少時にさかのぼることなどがあげられる(松本俊彦 解離性障害の診断および鑑別 岡野編:精神科臨床リュミエール 20 解離性障害 PP140-150 中山書店 2009年)。以前言われたほど、頭の中で聞こえることは、解離性の幻聴に特異的とは考えられていない(Honig, A., Romme, M. A. J., Ensink, B. J. , Escher, S. D. M.A. C., Pennings, M. H. A. , & deVries, M. W ( 1998). Auditory hallucinations: A comparison between patients and nonpatients. Journal of Nervous & Mental Disease,186(1 0), 646-65 1.←D525より)。
  他方の幻視はどうか。統合失調症においては少ないとされる幻視は解離性障害には比較的多く聞かれる。また統合失調症の幻視が奇怪な内容であるのに比べて、解離性障害の幻視の内容はおおむね現実的で、過去の外傷体験のフラッシュバックという色彩を持つ(Douglas Bremner: Neurobiology of Dissociation: A View From the Trauma Field (Dbook 324-339)しかし他方では、幽霊を見るケースも報告されている( Hornstein, N. L., & Putnam, F. W (1992). Clinical phenomenology of child and adolescent dissociative disorders. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 31, 1077-1085.
 またこれは直接の幻視ではないが、解離性の体験における背後からの見られ感は柴山が指摘するが(柴山雅俊 解離性障害-「後ろに誰かがいる」の精神病理 筑摩書房 2007年)、臨床でも非常に聞かれ、これは他方で幽体離脱や自分を背後から見ているという体験とも相補的である可能性がある。関係念慮は筆者もしばしば統合失調症の決め手として用いるが、解離性障害においても同類の体験が聞かれることがある。ただしそれは一過性で、症状の首座を占めることはなく、むしろほかの人格との関係がそれにより表現されているという印象を持つ。