2014年6月2日月曜日

解離の治療論 (47)解離性障害を診断する (1)

解離性障害を診断する

筆者の印象では、ここ10年で解離性障害の診断は以前より頻繁に、かつ正確に下されているという印象がある。統合失調症という見当違いの診断がついたままで「専門家」に紹介されるケースは少なくなってきている。ただし診断を下すことがそのまま治療のベースに乗るということを意味するわけではない。解離性障害の診断をいかに下すかは、その症例を知るということに尽きる。そして症例を知るとは、それを治療的に扱うと言うことを意味する。このように解離性障害の正確な診断は、解離性障害の治療的な扱いから生まれるという一見矛盾した事実がある。
本稿では松本(松本俊彦 解離性障害の診断および鑑別 精神科臨床リュミエール 20 解離性障害PP140-150 中山書店 2009年。)にならい解離性障害の鑑別に重要な統合失調症とBPDについて考えたい。さらには特に注意が必要とされる側頭葉てんかんについても触れたい。
精神病との鑑別
私が薦めるのは、いわゆる精神病性の症状としての幻聴や幻視か関係念慮をひとつの手がかりとすることである。さらには記憶の欠損ないしは健忘も診断の大きな決め手となる。 幻聴、幻視、関係念慮などの症状が聴取された場合、それは統合失調症の可能性とともに解離性障害の可能性を同時に生むということを理解しなければならない。解離性障害の決め手は別の主体性を持った人格が、脳に宿ると言う事実である。その気配、そのメッセージの伝達は容易に「精神病」性の症状として理解される。