2014年4月22日火曜日

フォサーギ先生の夢理論(6)


 「維持し修復する」ことに関して、フォサーギ先生はフロイトの「イルマの注射」の夢を例に挙げている。この夢では、フロイトは昼間にイルマに対する治療について同僚からいろいろ批判をされたが、夢の中ではそれらの批判を逆に批判するという内容であるという。これをself-righting というような英語で説明しているな。self-righting boat というと「セルフライティング[転覆防止]構造のボート」というそうだ。日本語にもなっているのだ。まあそれはともかく、夢にはそのような働きがあるという。起き上がりこぼしのようなものだ。
でもそれだったら、たとえば悪夢とか、トラウマのフラッシュバックに近い夢はどうなるんだろうか?などと疑問を持ちつつ読んでいると、出てきた。「心理的な構造の修復は、しかし必ずしも健康への方向性を持たない」そうだ。あまり健康ではない思考パターン、たとえば「自分が成功することは人を不快にする」といった思考を再修復することなどもある。
フォサーギ先生は、レムが生物にとって必要であることを強調する。典型的には、レムを抑えるとリバウンドが起きる。あたかも脳が一定の量を必要としていて、それが損なわれると急いで補おうとする。ある研究によれば、レムを抑えると、日中のファンタジー傾向が高まるという。このようにレムに代表される思考はもしかしたら覚醒時にも引き続いて起きているかもしれないというのである。
 レム睡眠を生体は必要としているようだ。リバウンドまで起こすのだから。だからそれは「維持修復」という重要な任務を持っている、というロジックはわかる。しかしそれならどうしてそれは「覚醒時の思考と同じなのだ」っていうんだろう?むしろ「覚醒時に起きた様々な出来事により混乱した思考をいったん整理しなおすという特別な役割をレムが担っているんだ」と言ってくれた方がわかりやすいのに、などとつい考えてしまう。
さて次にフォサーギさんは、結構勇気のあることをいう。フロイトの理論である、夢は防衛的な加工を行い、そこに潜在的、顕在的夢内容が生じるという議論は、もはや理屈に合わないという。もはや「この夢は~を象徴しているのだ」という話は時代遅れであり、意味がないというのだ。これを言ってもらうと…・正直私は助かる。