2013年6月19日水曜日

DSM-5とボーダーライン 改訂版(4)


ディメンジョナルモデルのもう一つの骨子は、カテゴリカルなPDの診断の大胆な削減であった。具体的にはそれまであった10あるPDの半分を除くことが提案された。その第一の目的は、並存症を減少させるということであったという。また削除するか残すかの根拠は臨床的な有用性の高さと妥当性のエビデンスの高さということになった。そこで調査をしたところ、反社会性、BPD、スキゾタイパルに関しては多くの研究がなされていたが、パラノイド、スキゾイド、ヒストリオニックはほとんど実証的な研究がなされていないことがわかった。またパラノイド、スキゾイドパーソナリティ障害に関しては、その除外に反対するような論文は出されなかったという。
 しかし
このような新しいモデルがDSM-5に登場することを予想していた多くの精神科医たちはそれを裏切られることになったことはすでに述べた。それは2015月に登場したDSM-5では、この新しいモデルはセクションIIIに紹介されているに過ぎず、セクションIIには、従来のDSMに見られたPDが掲載されていたのだ。ある報告によると、新しいPDの診断モデル(ハイブリッドモデル)2012年の12月には棄却されてたという。「パーソナリティとパーソナリティ障害」ワーキンググループには、二人のメンバーが辞退したが、他にそのようなDSM-5のワーキンググループはなく、またその長い作業が棄却された例はないという。つまりこのグループの内部は相当もめたことになる。要するにこのワーキンググループは一時はディメンジョナルモデルを信奉する人たちの勢いに過剰に流されてしまい、DSM-5を用いることになる多くの臨床家の性質を理解していなかったと言うことである。それは忙しい毎日の臨床に明け暮れる臨床家たちは、結局はカテゴリカルにしか考えない傾向にあるということである。つまりAさんはボーダーさんだろうか、とは考えても、Aさんはどの程度ボーダーさんだろう、とは考えにくいのだ。それに中途半端な診断は治療に用いた保険による支払いも大きく影響する。患者さんが「ボーダーさんの傾向がある」というだけで保険会社がその治療費を面倒見てくれるかは大いに疑問だからである。さらにはASPとかBPDのようによく知られていてクライテリアも正しいことがわかっているものをどうして変える必要があるのか、ということになる。ただしDSM-5ではワーキンググループの作業を尊重して、セクションIIIにその草案を掲載することになったのだ。
Black, DW: Personality disorders inDSM-5 Posted on Thursday, May 16th, 2013