2013年4月23日火曜日

DSM-5と解離性障害(20)


このシリーズ、もう20日もやっているよ。いい加減しつこいな。

この長い論文ももう最後まで来た。このブログのおかげである。「結論」の部分は大事だから少し丁寧に紹介しよう。(といいながら、論文の最初に使おうとしている。ナンのことだ?)
今回のDSM-5に向けての解離性障害の改訂の意味は3つあった。フン、フン。1.いわゆるDDNOSを減らす。そりゃそうだ。物事を分類して、「その他」が一番多い、というのは分類の方法に問題がある可能性がある。2.DSM-IV以降の研究の成果を反映する。3.それぞれの患者の違いにあった治療手段を検討できるようにする。どれももっともな話だ。そしてDSM-5におけるDIDの基準の変化、そしてDP/DR障害の導入は主としてそれに向けられたものだという。
DIDの基準の変化とは、例の憑依体験への言及、そして人格の交代は自己報告でもOKという付加である。DIDという診断はそれが治療者により与えられるのには時間がかかる。それをなるべく早く下されるようにし、それだけ早く治療を始めよう、ということだ。
さらにPTSD解離タイプ、という分類の成立も大きいだろう。そして大切なこと。PTSDなら誰でも暴露療法が役に立つとは思うべきではないこと。なぜなら「解離は扁桃体を基盤とする学習プロセスを阻害する」からだ。ここのところ、大切だから原文も書いちゃおう。Because dissociation interferes with amygdala-based learning process. それよりはSTAIRNST and cognitive reprocessingが必要であろう、という。(何じゃこれ、聞いたことないぞ。)
まとめると、文化的な、そして神経生物学的な研究の成果が解離性障害の分類をよりよいものとするための二つの機動力である、としている。そして解離性障害の生物学的な所見は、後部感覚連合野の異常な活動、前頭皮質の活性化、そして辺縁系の活動低下があげられる、とする。
感想:大体わかる。なるほどと思う。DIDの基準の変更が、NOSを減らすか?これは疑わしいと思う。DIDの診断がつかないその一番の理由は、治療者たちが慎重だからだ。私だって、そしておそらく患者さんだって「多重人格」が受ける様々な誤解を避けたい。NOSはその意味でちょうど便利な診断なのだ。DIDの過少診断はOKだが、過剰診断をしたら「やはりあの治療者はおかしい」ということになりかねない。NOSは、私は多重人格の診断には慎重を期していますよ、というアピールでもある。そしてこれはおそらく日本だけの事情ではないはずだ。また「DIDの人格交代は自己申告でもいい」もこの文脈から危うい面を持つような気がする。TAIRNSTについては勉強しなきゃ。解離で「後部感覚連合野の異常な活動」が見られるというのは、かなり昔からいわれていたことのような気もする。解離性の幻覚や知覚異常が起きる期所を考えれば当然のことだろう。
それと解離タイプのPTSDには暴露療法は不向きだという説、すごくためになった。