2012年9月7日金曜日

第2章 ミラーニューロンが意味するもの (2)



  さてミラーニューロンの話がここで終わらないのは、現在さまざまな分野で関心を呼んでいるアスペルガー障害との関係でも、さまざまな仮説が考えられているからだ。本来自閉症でミラーニューロンの機能が低下しているのではないかという仮説はしばしば提唱されていた。何しろ他人の気持ちを理解できない、いわゆる「セオリー・オブ・マインド」の障害が自閉症の本質と目されてきたからだ。
 自閉症とミラーニューロンの関係については、最近脳波所見で進展がみられている。脳波ではμリズムという波があるが、これが何かを自分でしたり、他人がしているのを見たり、イメージを浮かべたりすると抑制される。そしてそれがミラーニューロンに相当すると言われている。そして自閉症ではこの抑制が、自分の行動の際にしか起こらないという。http://www.sciencedaily.com/releases/2005/04/050411204511.htm
 この研究に関わっているのがおなじみのラマチャンドラン博士(名著「脳の中の幽霊」の作者)であるが、彼は自閉症の患者がμリズムを獲得する手段として、バイオフィードバックを提唱する。このリズムは結構意図的にコントロールが可能ということである。更には鏡を用いて自分の姿を他人に見立ててμの抑制を体感するという治療手段も考えられているという。
 自閉症でこのミラーシステムが低下しているという可能性は、実は自閉症の持つ言語機能の障害や運動の不器用さなどをも説明すると言われる。それはある意味ではもっともな話である。何しろミラーニューロンは、ブローカ野にも、運動前野にも存在して言語や運動の機能を担っているからである。