2012年7月15日日曜日

続・脳科学と心の臨床(49)


DBS(脳深部刺激)への期待(2

 ところで脳深部刺激の話になると、やはりオールズの実験にさかのぼらなくてはならない。しかしこれは快感中枢の問題にも関係しているために、私自身そちらに流されないようにしなくてはならない。(快感中枢の話になると、とたんに熱を帯びてしまうのだ。)ちなみに私が以下にさもわかった風に書くのは、ネタ本「脳が『生きがい』を感じるとき」(グレゴリー バーンズ (), 野中 香方子 (),日本放送出版協会、2006年)の助けがあるからだが、このテーマでは最良の本だと思っている。

オールズの実験とは、ラットの脳に電極を差し、快感中枢を刺激したら、ラットは死ぬまでそこを刺激するバーを押し続けた、という例の実験である。おそらくこの実験が革命的であったことは間違いない。それまでどうやら脳というのは、そのどの部分を刺激しても不快感しか生まず、ネズミはそれを回避する傾向にあったという。

1952年というから、もう半世紀も前のことである。若く野心的な心理学の研究者ジム・オールズは、動物の動機づけを知る上で、網様体賦活系というところを刺激することを考えていた。そしてその部分に電極を差したつもりになっていた。そしてラットの反応を見ていると、どうやらその刺激を欲していることをうかがわせる行動を見せた。そこでラットをスキナーボックスに入れてみた。スキナーボックスには様々なレバーや信号や、それによる報酬を与える仕掛けが備わっている。そこでレバーを押すとラットの脳の該当部位に信号が流れるようにした。すると・・・・ラットは一時間に2000回という記録的な頻度でレバーを押すようになったのである。

さてここまで書くと、きっとニヤッとした人はいると思う。過去に私もこのブログで確か書いたことであるが、「では私の脳にも電極を・・・・」という人がいてもおかしくない。