2012年6月14日木曜日

続・脳科学と心の臨床(22)


偶然ではあるが、ごく最近ロイター通信が次のようなニュースを伝えている。http://www.reuters.com/article/2012/05/07/us-brains-psychopaths-idUSBRE8460ZQ20120507
Study finds psychopaths have distinct brain structure (サイコパス(精神病質)たちが特異な脳構造をしているという研究)”
さわりをちょっと訳してみる。
殺人やレイプや暴行により起訴された人々たちの脳のスキャンにより、サイコパスたちは特異な脳の構造を有していることがわかったという。ロンドンキングスカレッジの精神医学研究所のブラックウッドらの研究によると、そのような所見は彼らをその他の暴力的な犯罪者とも区別するほどだそうだ。それが(昨日も触れた)前部吻側前頭皮質と側頭極である。(何度か書いているうちに覚えてしまった。画像つき。)

これらの部位は、他人に対する共感に関連し、倫理的な行動について考えるときに活動する場所といわれる。サイコパスたちの脳は、これらの部分の灰白質(つまり脳細胞の密集している部分)の量が少ないという。こうなると認知行動療法的なアプローチもできないことになる。ちなみにこのことは司法システムとも関連してくる。というのはこれらの人々を脳の異常であるとしることで、これらの犯罪者が心神耗弱ということで無罪放免にされてしまう可能性があるからだという。
ブラックウッドの研究をもう少し見ている。MRIを用いた研究では、44人の暴力的な犯罪者を研究した。そのうち17人がASPD(反社会性パーソナリティ障害)プラスサイコパス、あとの27人が満たさなかった。それを22人の正常人と比べたのだ。そしてサイコパスたちに見つかったのが、例の二つの場所の灰白質の量が顕著に減っていたというのだ。ちなみにこれらの部位が犯されると、共感をもてなくなり、恐れに対する反応が鈍くなり、罪悪感とか恥ずかしさなどの自意識感情を欠くことになる。
ところで読者はサイコパスとASPDの違いが曖昧になってきたかもしれない。この違いがまた興味深いのだ。(明日に続く)