2012年2月1日水曜日

心得7. 事例

事例)
認知行動療法の創始者アーロン・ベックはまだご健在である。彼は若い頃、他の同年代の精神科医の多くががそうしたように精神分析のトレーニングを行っていた。そしてその最中に、認知療法的なアイデアを得たと講演などで語っている。彼によればある分析の患者の自由連想による面接を終えてふと「今日のセッションはどうでしたか?」と問うてみると「先生には自由連想でも言えないことがあります」という。どうしてかと聞くと初めてその患者さんは「私は何を話しても先生に馬鹿にされるような気がするんです」と打ち明けたという。その女性はうつ病を長く病んでいたが、ベック先生はうつ病の患者さんが一般的に、ある種の決まった考えを常に持っていて、それが彼らの病状を悪化させているのではないかと考えたという。そしてそのパターン化された考え方に焦点を絞って治療を行うことを考え、認知療法を創始したというわけである。このように考えると精神分析と認知療法は結構近い存在であるということが実感できるであろう。