Q:さて、対人恐怖というと日本文化に特有の病気であるとどこかで読んだ気がしますが、いかがでしょう?
A:そうなんです。長年の常識がそうでした。少なくとも1980年まではそうでした。アメリカでその年に社交恐怖という、対人恐怖に似た診断がなされるようになりました。すると今では、アメリカではうつ病、アルコール中毒に続いて三番目に多い精神疾患ということになっています。人口の13%くらいは社交恐怖を持っているというのです。それまではアメリカでも少ないといわれていたわけですからどうなっているんでしょうね。私がアメリカに渡ったのは1987年ですので、アメリカでの恥の意識が大きく変わる時期でした。なにかとても不思議な気がしたのを覚えています。私が渡米した時、アメリカ人が日本人と同じように人込みを避けたり人目を気にするのかはとても興味がありました。そしてしばらくして気が付いたのは、彼らも人間であり、対人緊張を持つという点は日本人と少しも変わらないということでした。たとえば長い廊下の向こうから知っている人が歩いてくると、そこでの緊張感は日本人の場合と同じです。ただアメリカ人はそこで早めに挨拶をしてしまうというところがあります。日本に住んでいると、例えば狭いエレベーターに知らない人と二人で乗る時などはとても緊張するのですが、それは挨拶をそこで変わる習慣がないからでしょう。アメリカではそんな時は、知らない者同士でも「ハーイ」と言って挨拶を交わすことでその緊張を和らげるというところがあります。アメリカ人のほうが対人緊張に日本人より耐えられない、という可能性もあるかもしれませんね。
Q:長いお答えでしたね。曲の時間が無くなってしまいました。